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2009年12月26日 (土)

サイト擬人化SS ークリスマスクライシスー

ってことで、何か書いてみました。


最新版:2009年12月26日 AM:6時7分







続きよりどうぞ!


















それは秋の夜長の不思議な冒険だった。
空から男の娘が落ちてきたり、人魚にパイタッチしたり、腕を噛まれたり、躯を侵食されかけたり、色々あったその小さな冒険も、遂に終わろうとしている。

聖女様の弾くオルガの音色が聴こえなくなったら。
天使の歌声が聴こえなくなったら。


聖女様がオルガを弾き始め、天使様がそれに合わせて高く、澄みきった声音を響かせる。
荘厳さを取り戻した、礼拝堂に。


初めて聴くのに、懐かしく感じるメロディを聴きながら、ふわふわとした白い衣装を纏う少女はその躯を傍らにいる禍々しい人造人間の躯にもたれかけていた。

白い衣装の少女…まみは傷だらけの躯を何とか起こし、人造人間…ネギタレにもたれかかって立っているのがやっとな状況だった。
…もっとも、ネギタレの躯も相当傷付き、体力も限界を軽く突破していたし、そんな彼らに取り憑いているケットシー…ネコイトも、フランケン…ジンカイトも先の戦闘で精神力を激しく消耗し、もうくたくたになっていたのであるが。


そんなぐったりとしている3人と1匹をとても優しいオルガの音色は、とても純粋な声音は包み込む。

柔らかい温もりに包まれて。


演奏が、もうすぐ終わる…。


ーーまみちゃん…もうお別れなんだね…。

ーーそう…ですね…。
  短い間だったですけど、一緒にいれて良かったです。
  ありがとうですぅ…!

ーーえぇ、私も…。
  ありがとう、まみちゃん。貴女のおかげで、ジンに私の気持ちを伝える事ができるよ。

  元気でね…。

ーーうん…!
  ネッちゃんも元気でいるですよ…?



ーーさっきの…アレは…悪かった…。

ーーおい、ジン、まだ言ってるのか?
  もう良いって。不可抗力だったんだから、仕方ないだろ?

ーーだけど、ネギタレが…

ーー大丈夫大丈夫、ぎごくちゃんもチビちゃんも限度は分かってるだろうから。

  それよりも、もうジンとお別れだなんて…。
  折角息が合ってきたっていうのに、残念だなぁ…。

ーー…あぁ。
  短い間だった。けど、ネギタレと一緒に、いられて…良かった。
  あ…あり…ありが…とう…。

ーーぇ?
  …お礼を言うのは俺の方さ。何度も力を貸してくれたおかげで、色々なことを乗り越えてこれた。

  ジン………ありがとう。また、会おうな。


まみとネギタレに憑いていたケットシー…ネコイトとフランケン…ジンカイトがそれぞれのパートナーに語りかける。
そして、それぞれの、束の間の相棒に感謝とお別れを伝えて。


そして…。

短い短い演奏が終わった。


その刹那ーー

世界が泡のように弾け、消えていく…


『ジン、ありがとう。大好きだよ…。』

『ネコイト…。
オレも、好きだ。』

『ジン…ずっと、一緒だよ…!』
『あぁ、ずっと、一緒だ。』


視界から全てが消え行き、意識も遠退く中、ネコイトとジンの声が元の姿に戻ったまみとネギタレの頭に響いた。
まみはネギタレの躯に頭をこてん、ともたれさせて、ぼんやりとそれを聴いていた…。












あれから約2ヶ月。
季節は変わり、寒さが身にしみる年末。


「今年は暖冬だって言ってたのに、ばっちり寒いじゃないか…」

そう独り言を零しながら、分厚いダウンのジャケットとマフラーで防備したネギタレは思い出に浸っていた。

あの後、一人で大広間の掃除をさせられたんだよなぁ。
ゴウもラヌちゃんに片付けを押し付けられたって言ってたけど、玄関ホールの掃除だなんて俺よりまだマシじゃないか…。
しかも、1人でやってた訳じゃないんだし…。ぁ、最終的に全部押し付けられてたんだっけ?
…まぁ、良いか。


「合流して、早速中学開始ー?」(タレー、まだ準備してるですかー?)


懐かしい回想に思いを巡らしていると、まみが呼びかけてきた。
今日はクリスマス(正確にはクリスマス・イブ)。
皆で遊びに行こうって話になって、これから街へと遊びに行くのだ。


「…ん?
あぁ、もう行けるよ!」


ネギタレはそう返事を返し、フラとムメを伴ってまみの所へと向かった。

そして、4人(!?)はクリスマスムード高まる街へと繰り出して行ったのであった。


「ネタギレ・ふつうじゃないにっき」空間の片隅に集束する、不吉な存在には気付かず。









「空想さんもたまには粋な事するね。
プレゼンと置いていく所なんて、コートを翻した瞬間にいなくなってるとか恰好良かったし。
雪降らせたのも空想さん何じゃないかって思えてくるよ。」


「ふぅ…!」


どさっ!!


街から帰ってきたネギタレは物凄い量の荷物をテーブルの上に置き、一息入れる。
そして、思い思いの場所に陣取ってくつろぐまみ、フラ、ムメを見やり…


「…っていうか、お前らは良いよなぁ。
ラヌちゃんと会って、食べ歩きだなんて。」

「目もしてるんだが。(どうせタレは予定が入ってると思ったですぅ。)」


ブーたれるネギタレにまみはお気に入りのソファに寝そべりつつ答える。


「いつから約束してたのさ?」

「えーと…1ヶ月前くらいかしら。」

そんな前から約束してたんなら予定空けられたのにっ!!

「だって、タレいなかったじゃんwww
わざわざタレに言うのも面倒くせーし、言わなかったって訳だ。」

言えよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!

「後の祭りね。」

「うぅ…」(しくしく


フラとムメに食ってかかったネギタレであったが、フラの一言に撃沈され、三角座りをしてしまう。
あぁあ…「ドナドナ…」なんて言っちゃって。



「…っ!!」

「タレ、何かいるわ!!」

「何…!?」

「大きい続き…!(まみも感じたですぅ…!)」


ネギタレの様子に飽きれていたフラとムメが「そいつ」の存在に気付き、一気に4人に緊張感が走る。


「まみ、行くぞ!
フラ!ムメ!そいつのデータを分析してくれ!!」

「「了解!!」」

「替え歌は楽しいの!」(あいあいさーですぅ!)


今まで三角座りをしていたネギタレがすくっと立ち上がり、3人に指示を飛ばす。

そして、4人は空間内を高速で移動し始めた。





「フラ、ムメ、そいつについての情報は何か掴めたか?」

「掴めはしたんだが…」

「ちょっと厄介な奴が進入したみたいなのよ…。」


ネギタレの問い掛けをムメが肯定し、フラが続ける。


「厄介な…?
ってことは…」

「えぇ、コンピュータウイルスよ。」

「しかも、対象物を侵食してデータを破壊・分解する能力を持ってる奴だ。」

「それは…厄介だな…。」


フラとムメの報告にネギタレは眉を顰める。
そんなネギタレにフラは更に報告を続けた。


「幸い、相手は1体で増殖能力はないみたいね。」

「サンタあげようか…。(珍しいタイプですね…。)」

「単独行動するタイプのコンピュータウイルスだなんてな…。

出来れば、戦闘を避けて追い出したいけど…。」

「私達は避けても構わないわ。
でも…」

「もし、そいつが他のサイトに迷い込んだら…」

「地上は、高いの…。(場所によっては、大惨事ですね…。)」

「ならば、俺等が倒しておくべきなのかもな…。」


ネギタレの言葉に、まみは不安そうな表情でこくりと頷いた。

これから相手する事になる奴は正直言って危険な奴である。
普段はヤル気満々になるまみも内心不安で仕方がないようだ。
不安なのはネギタレも同じ。
ヘタをすりゃ、この世界から消滅してしまう。


「負ける訳にはいかない…か…。」

「ご注文を浮いた…!(絶対、生き残るですよ…!)」


ネギタレは独り言を発し、まみもまた然り。
引き締まったその表情は…あぁ、2人は覚悟を決めたようだ。


そして、「何者か」の反応がある場所が近付いていった。



「マフラー…?(これは…?)」


4人はとても巨大な赤い結晶の前に立っていた。
結晶は不透明で、ぼんやりと輝いている。


「これは…。」

「あぁ、そうだ。」

「私達がアイツの周囲の空間を切り取って、隔離しておいたわ。
これ以上、被害が増えないようにって。」

「そうみたいだな、ありがとう。」


ネギタレの言葉に、ムメが頷き、フラが説明をする。
この結晶の中にあるべき空間と物体は今や別の次元に飛ばされている。
だから、この空間への被害はもうない。
だが…


「あの範囲と質量を隔離し続けるのは大変なのよ…。」

「隔離していられるのはもって後48時間だ。
行くなら、さっさと覚悟を決めて貰わないと俺等の魔力が尽きちまう。」


フラとムメを持ってしても、この大規模な隔離を長い事続けることは出来なかった。
しかし、ネギタレは動揺しない。


「勿論、倒す為にここまで来たんだからな、今更逃げ腰にはならないさ。
アイツの進撃を止めてくれたお前らに感謝するよ。


…さて。
まみ、準備は良いか?」


ネギタレの問い掛けに、まみはゆっくりと頷く。

そして4人は赤い結晶へと飛び込んだ…!!




「グルルルゥ…。」


ネギ達は、異次元空間でソイツと対峙していた。

ネギ達の目の前にいるのは…黒や紫の鱗を身に纏った超巨大な4足歩行のトカゲのような姿。
全高が20m、全長は長大な尾を含めて50mはあるだろうか。

「ゼルダの伝説 時のオカリナ」に登場した「キングドドンゴ」のような姿をした頑強そうなソイツは、じっとネギタレ達を見据えていた。

獲物を品定めするように。


異次元空間内の地面は爪痕や穴ぼこ、データを分解された痕等でいっぱいであった。
おそらく、この怪物がこの異次元から抜け出そうと大暴れしていた為だろう。

この姿と周りの状況を見る限り、相当な強さを誇っていると思われる。
それでも、ネギタレ達は挑まなければならなかった。


「また大層なフレームとテクスチャーを生成しやがって…」

「顔のかって怪しいとか言ってみる。(ポリゴン数もかなり多いみたいですね。)」

「なんてデータ数だよ、コイツ…。
こんなんで機敏に動けるとか言うんだったら、最悪だ…。」


表情を苦々しそうに歪め、悪態をつくネギタレ。
まみも険しそうな表情を浮かべ、怪物の躯を見やっていた。


「グルルル…キシャアッ!!」


ドシュン!!


長い事沈黙を守っていた怪物は突然口を大きく開け、口からネバネバとした紫色の液体弾…ウイルス弾をまみ目がけて吐き出した。


「…っ!!」


グシャア!!

ジュウウゥゥゥ…


「物凄い思い!(地面が溶けたですぅ!)」

「そうか、これで対象物を侵食してデータを分解するのか…。」


ドシュン!
ドシュン!
ドシュン!
ドシュン!
ドシュン!
ドシュン!


怪物は次々と悪魔の弾を吐き、獲物を侵食しようとしてくる。
それに対し、まみはその運動能力で回避。
ネギタレはあまり回避が出来ないのでツタで攻撃を受け止めつつかわしている状況だった。


「キシャア!!」


ズズンッ!!


このままじゃ埒が明かない。そう思ったのだろう、怪物がいきなりジャンプして着地する寸前のまみに向けて突撃してきた。

そして、その巨大な口を開ける。噛み付く…というよりも、そのまま呑み込んでやろうとしているようだ。

鋭い剣のような歯が鈍く閃き…


ガチンッ!!


空を切る。
間一髪、再び跳び上がったまみが攻撃をかわしたのだ。

しかし、それだけでは終わらなかった。


ブゥン!!

ーーズゴンッ!!
「あぐっ…!!」


「まみっ!!」


ズガッ!!


今度は鉄柱のような太さの尻尾を振るいまみに命中する。
まみはあまりの衝撃に満足な声すらあげられぬまま吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。


ネギがまみの元へ駆け寄るが、怪物がまみに喰らい付く方が早いだろう。


「うっ…く…」


重い一撃をその小さな身にまともに受けたまみは動く事ができない。


「くそっ…!!」


怪物がまみを喰らう前に助けなければ…ネギタレは夢中で背中のツタを幾数本も伸ばし、硬質化させて怪物に思いっきり叩きつけた!!


ブォン!!

ーーズシャンッ!!


「ギャアアアアア!!」


硬質化したツタでぶん殴られた怪物は痛みに思わずよろける。


「今だ…っ!!」

ネギタレはその隙を見逃さず、すかさず硬質化されたツタで怪物の4本の足全てを薙ぎ払った!


ーーズガァアン!!


4本の足全てを足払いされ、盛大に地面に倒れ伏す怪物。
だが、それだけでは終わらない。


「今だ、フラ!ムメ!」

「「はぁっ!!」」


ネギタレの一声に、いつの間にか怪物の所まで行っていたフラとムメの躯が赤くなる。
そして…


ーーピキィン!!


倒れ伏した怪物は半透明の赤い結晶に閉じこめられる。
思うように身動きが取れない怪物。

その隙にまみの所まで到達したネギはまみを抱えて怪物から離れていく。


ーーパリンッ!!


ガラスの割れる音がした。
振り向くと、フラとムメが張った「封印結界」が破られ、怪物が自由の身になっていた。
赤い結晶内のフィールドを異次元空間に飛ばすという芸当でフラとムメの魔力の6割は消費される事になるので、普段の力が発揮できないのだ。


「くっ…!!
フラ、ムメ、食い止めてくれ!」


「「了解!!」」


自らから離れるネギタレに向かって今、まさに突撃しようとした怪物の横っ腹に赤く輝くムメが突っ込む。


ドスッ!!

「ギシャア!?」

体当たりされた箇所のテクスチャーやフレームが消滅する程のダメージを受け、真横に吹っ飛ばされて悲鳴をあげる怪物。

更に…


ドスッ!!

「グギャア!!」


ムメが体当たりしたその反対側から今度は赤く輝くフラが突撃し、また真横に吹き飛んでいく怪物。
その両方の腹は抉れ、中のフレームが剥き出しとなっていた。


ズガァアン!!


「グギゥゥゥ…」


「大丈夫か、まみ…。」

「犬の置物がぶっちゃけとか考えた…。(足手纏いになってごめんなさいです…。)」

「何言ってるんだよ…。
お前がいるからこそ俺は頑張れるんだぜ?」

「背筋か…。(タレ…。)」


地面に倒れ伏し、呻き声をあげる怪物を尻目に、ネギタレはまみを地面に降ろし、救急パッチをあてている。


「まみちゃんの回復は私達に任せて!」


と、今まで怪物の傍にいたフラとムメがネギタレの元に帰ってきていた。


「フラ、ムメ、頼りっぱなしで悪いね…。」

「気にすんな、俺等の仕事はタレ達をサポートすることだからな!」

「その通りよ。
さぁ、まみちゃんを回復させるわよ!」

「あぁ!!」

「ん…?
げっ…あいつ、自己再生機能があるのか…。。」


どうやら、フラとムメがまみを回復させている間に、怪物は態勢を立て直したようだ。
両方の腹が修復され、元通りになってた事に、ネギタレは冷や汗を一つ。


「面倒くさいなぁ…って、わわわっ!!」


怪物が口から魔の弾を発射してきたのを見たネギタレは慌てて幾数本もの硬質化させたツタを地面に潜らせ、自分たちの前に垂直に突き出させて壁とした。


「タレ!
サポートするぜ!」

「ムメ!
お前もまみの回復を…」

「少しでも安心できる環境を作ってもらわないと、おちおち回復もしていられないからな。」

「ははっ中々手厳しい事言うじゃん…。。」


まぁね、と言うなり、ムメの躯が赤く光り輝く。
次の瞬間、半透明の青い結晶がネギタレ達を包み込んだ。

ネギタレの防御技「ツタの壁」も内包する大きさの結晶が怪物の目の前に出現する事となったのだが…


ズシャン!

ズシャン!

ズシャン!

ズシャン!

ズシャン!

ズシャン!

ズシャン!

ズシャン!


怪物が魔の弾を連射しつつ、距離を徐々に詰めていく。


「くっ…!!
やっぱ、長くは持たないか…。」


実態があれば、ムメは冷や汗をかきつつ苦々しい顔でこの科白を言っているのだろう。
そう思いつつ、ネギタレは壁を為すツタの本数を更に増やす事に集中した。


そして…


「グオォォオッ!!」

ーーバキィン!!


「うぐっ…!!」


突撃してきた怪物の質量に耐えられず、ムメの「結界バリア」は崩壊してしまった。
更に、間髪入れずにツタに魔の弾を零距離射撃してくる。

ネギタレの硬質化したツタも2〜3発受け止めれば崩壊してしまうので、次々にツタを繰り出し、隙間を作らないようにツタの壁を維持しなければならなかった。


「キシャアアアア!!」


更に、怪物はツタの弱った箇所から爪や牙を使って突破口を開けようとしているようだ。
それを見たネギタレは少しニヤッとしつつ呟く。


「俺の『ツタの壁』は容易には突破できないよ…!」


しかし…


ーーバリバリッ!!


「キシャアア!!」


「…ってえぇっ!?」


『ツタの壁』を突破してきた怪物に驚きを隠せないネギタレ。
どうやら、爪や牙にもデータを破壊するウイルスを分泌させることができるようで、そのウイルスでツタを弱体化させたらしいのだ。


バシッ!!

バシン!!
バシン!!


撃ってきた魔の弾をツタで相殺しつつ、怪物にツタを叩きつけるネギタレ。


「キシャアッ!!」


ドッ!!


「くっ!!」


怪物の爪がネギタレを襲い、間一髪の所でかわしたのも束の間。


「ぐっ…!!」


死角から振り降ろされたもう一方の前足がネギタレを捉え、潰しにかかってくる!!
ネギタレは両手で怪物の足を受け止め、必死に踏ん張って潰されないように耐える事となってしまった。


「グアアッ!!」


「うっくっくっくっくっく…や、ヤバい……。。」


潰されまいとただひたすらに力比べを行うネギタレだが、どうみても劣勢であった。
このままじゃマズい…こうなりゃ、ツタで何とか…そう考えている時だった。


『ネギタレ、苦戦してるみたいだな?』


「って、えっ!?」


がくんっ!!


「おわっ!!」


予想だにしていなかった人の登場にネギタレは吃驚し、力が抜けて危うく潰されかけた。
声をかけてきたのは…薄い緑色に光る球。


「ジン!
なんでこんな所にいるんだ?」

『その話は後だ。
兎に角、ネギタレを手伝いに来た。』

「ぇ、手伝いに…?」

『そうだ、手伝いに。
オレが憑依して手助けする。
…良いな?』

「ぇ…ちょっと待って、話を先に進めないで…」

『ネギタレ、時間がない。
憑依するぞ!』


声の主は人造の青年、ジン…ジンカイトだった。
突然の再開に戸惑うネギタレであったが、ジンはそんなのお構いなくさっさと話を先に進めてしまう。


「ぇ、ちょ…まっ…!!」


そして、ジンカイトが半ば強引に取り憑き、ネギタレの姿が人造人間のそれに変わる。


ーーネギタレ、オレの力でコイツを投げ飛ばせ…!

ーーあのさ、いきなり過ぎるって!
  ちょっと気持ちを整理させてくれたって良いだろ!!

ーー兎に角、時間がない。

ーーあー、もう、分かった!分かったよ。
  じゃあ、ジン、行くぞ…!


ジンとネギタレは息を合わせ、躯に力を込めて…


「『そぉい!!』」


ブゥン!!


「ギシャアアアア!?」


ズガァン!!


フランケンの力を得たネギタレはそのとてつもない怪力で怪物を遠くにぶん投げる!!
投げられた怪物は地面に叩きつけられ、悲鳴をあげた。


『ジン、やったね!』


まみが体勢を建て直したネギタレの傍に走り寄って来る。
その服装はいつものカラフルなワンピ姿ではなく、ふわふわとした、白い服であった。


「ぁ、ネコイトちゃんも来てるんだね?」

『ネギタレさん、お久し振りです!』

「ポーズ、射撃武装が高いんだよね!(しかも、取り憑いてもらったら体力が全回復したですよ!)」

「そうなんだ…。。」


2ヶ月前はそんな機能、なかった筈だが。
取り敢えず、怪物が体勢を建て直そうとしているので、気持ちを戦闘に戻す。

まみと目を合わせ、お互いの意思を確かめ合う。
そして、次にフラとムメに目配せ。


「じゃあ…行くぞ!」


気合いを入れたネギタレはジンの憑依を解き、元の姿に戻る!
そして間髪入れずに数多のツタを硬質化させ、地面に突き立てる!


怪物が体勢を建て直し、こちらへと向かおうとした刹那…


ズガガガガガガンッ!!


地面から垂直に飛び出したツタ達が怪物の四肢を、頭を、貫く。
その衝撃は凄まじく、四肢や頭は躯からもぎ取られ、吹き飛ばされた。


ドッ!!


「やったか!?」


胴体と尻尾だけとなって倒れ伏す怪物。
しかし、すぐに欠けた箇所の再生が行われ、元の姿に戻る!


「くっ、ダメか…。」


思わず歯噛みするネギタレ。


『なぁ、アイツ、コアとか、ないのか?』

「コア?」

『コアがあるなら、活動に必要なものは全てその中に収納されてるんだけど…』

「コア…ぁ、あるわ!
あの胴体の中よ!」

「俺達があの邪魔な飾りを吹っ飛ばす!」


フランケンとケットシーがネギタレに助言する。
そしてそれにフラとムメが反応した。

ネギタレはうん、と頷いて、まみに目配せをした。
そして…


「まみ!」

「にゃっ!!」


ネギタレの一声を合図に、まみが素早く怪物へと突撃する!

怪物が魔の弾を発射するが、まみはそれを左右にかわし、当たる事はない!


「フラ、ムメ!」

「「了解!!」」


次に、ネギが一声。


「グガァ!?」

魔の弾を発射しようとしていた怪物の目の前に赤く輝いたフラが躍り出る!
突然の出来事に驚き、一瞬怯んだ怪物にフラが突っ込み…


チッ!!バチバチバチイッ!!!!


激しい放電が怪物を襲う!!
赤いフラが放つ青白い電撃は瞬く間に怪物のテクスチャーやフレームを消し飛ばしていく。

しかし、フルパワーで撃っているのに、頭と首、上半身の一部を消滅させる程度の威力しか出せない!


怪物からサッと身を引くフラ。
そのフラと入れ替わりに、今度はムメが躍り込んでくる!
そしてムメも赤く光り輝いており…


グォ…グオォォォォォォオッ!!!!


青白い灼熱の火炎を放ち、怪物の前足や胴体のテクスチャーやフレームを焼き払う!!

そして、怪物の胴体の中に格納されていた赤い「コア」が露出した…。
コア周囲のフレームが急速に再生されていく。

しかし…


タンッ!!


「『に”ゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!』」

バキィイッ!!


怪物の懐まで入り込んでいたまみは跳び上がり、渾身のネコパンチをコアに叩き込む…!!

ネコパンチの重い一撃にに耐えられず、コアは全体にヒビが入り、脆い状態となる。
そして、まみは素早く空中ジャンプを行って身を引き、その刹那…


ーービュッ!!

ガギンッ…!!


鋭い物がコアのヒビ割れの部分に突き刺さった。

それは、ネギタレが持っていたナイフ。
ネギタレは、まみでも数十秒かかる距離からナイフを飛ばし、正確にヒビ割れて脆くなった箇所に突き刺したのだ。
それも、まみがネコパンチをお見舞いする前に投げている。
それはまるで、ヒビ割れが起こる場所を予知していたかのような、とても精密な投擲だった。
そして、ナイフは強大な力で以て投げつけられていた。


ピキッ…ピキッ…


コアのヒビ割れが深くなり、小さな破片が幾つも剥がれ落ちる。


そして…


ガッシャーン!!


怪物のコアはまるでステンドグラスが割れるような派手な音を立てて砕け散った。
コアの崩壊と共に、怪物の躯を構成していたテクスチャーやフレームが粉々に粉砕され、データの破片となって飛び散る。


「「『よっしゃあ!!』」」
「「『やった!!』」」


ネギタレとフランケン、そしてムメが同時に叫び、まみとケットシー、フラも同時に叫んでいた。


「まみ、ネコイトちゃん、お疲れ様!」

『ジンもネギタレさんも恰好良かったよ!』

「高くない隊長!(まったく、その通りですね!)」


戻ってきたまみとネコイトの労を労うフランケンの容姿のネギタレ。
どうやら瞬時に憑依したらしい。


そう言えば…
まみ嬢の本心(?)がちらっと見えたようだ。

と思ったけど、あんなトドメの刺し方をしたのだから恰好良いと思っても不思議じゃない。

…気がする。


『オレ、あまり活躍してないんだけど…』

「何言ってるんだよ。
ジンの力添えがなければアイツを投げ飛ばせなかったし、ナイフもコアを破壊する力はなかったよ。
ありがとう!」


ちょっと不服そうな声でブーたれる相棒にネギタレはニヤッとしながら感謝した。

そして、ネギタレとまみの服がいつもの服に戻り、薄い緑色と白い光球が彼らの傍に現れる。


「ありがとう、ジン、ネコイトちゃん!」

「高いシリーズ!(2人のおかげですぅ!)」

『ぇ?
私はまみちゃんとネギタレ君が頑張ったおかげだと思うなぁ。』

『オレも、そう思う。』

「まぁ、ここは皆で頑張ったからってことにしておこう!」


お互いになんだか照れ臭い状況が続いていたが…
ぉ、上手くまとめたな、ネギ。


「ところでさ、2人はどうやってこっこに来たんだ?」

『それはね…ちょっとしたカラクリがあるんだよ!』

「へ、カラクリ?」

『ネギタレ、まみ!
悪い。もう時間みたいだ。』

「高い衝撃?(ぇ、もう行っちゃうですか?)」

『うん、私達がこっちにいられるのには制限時間があるんだけど、凄く短いんだ…。』

「ホントに時間がないんだな…。
もっと話をしたかったよ。」

『また、お別れだ。』


フランケン達の光球が淡く発光をしている。
きっと、「制限時間」とやらの影響だろう。


もうお別れだなんて、としんみりとする一同。

そして、束の間の再開を喜ぶ暇もなく、2つの光球は天へと昇って行く。
それを見送る一同。


「良い海戦〜!(また会いに来るですよ〜!)」

「ジン、ネコイトちゃん!
いつでも会いに来てよ!!」

「私達皆で待ってるから…!」

「幽霊だから大丈夫だと思うけど、元気でいろよ!」


『また会おうね、皆…!』

『供え物の食べ物、美味かった。
…元気でな。』


空高くへと消えていく光球を見送りながら、ネギタレがポツンと一言漏らした。


「…お供え物のカレー、食べたんだ。。」






フランケンとケットシーを見送って暫く余韻に浸っていた一同であるが、ようやっとネギタレが次の仕事にとりかかり始めた。

「さて…。
フラ、ムメ、疲れている所悪いんだけど、結晶の解除を…。」

「えぇ、そうね…。」

「しかし、だいぶ魔力を消費したな…。」


フラとムメは度重なる攻撃技の使用と結晶の維持で魔力を激しく消費しており、とても疲れている状態だった。
早く休ませてあげないと…とネギタレは思いつつ、テキパキと戦闘フィールドとなっていた結晶内の修復に着手し始める。


「里芋とか言えるだろう!(じゃあ、まみはあっちの穴ぼこを直すです!)」


ケットシーとの憑依によって何故か体力が全回復したまみも率先して修復のお手伝いをする。


と…


ーードゥ!!


「…っつ!?」

まみがのけ反りながら吹き飛ばされる。
まるで、「不可視の力」が思いっきりまみの背中にぶつかったように。


「なっ…!?」


突然の事態に、ネギタレ、フラ、ムメが辺りを見回す。
そして、ムメが「それ」を発見する。


「おい、タレ!
あそこだ!!」


ネギタレがムメの指し示す方向を見ると、そこには…


「あ、あれは…!!」


その姿にネギタレは驚愕する。





ネギタレの視線の先には…巨大な卵形を形成する、黒い霧のような姿。


「あの時の…」


その姿は、まさしく…


「透明人間…。」


そう、約2ヶ月前のあの「小さな冒険」の最後に、礼拝堂で対峙した、あの透明人間の取った姿だった。
そして、あれは…とてつもない力で自分たちを蹂躙しかけた存在。

あの時は、アンバーちゃん達がいたから何とかなったものの、今回はそうはいかないだろう…。


「どうして、あれが…」


一気に険しく歪んだ顔に冷や汗がひとつ。


そして、空間内に風が吹いた。




「まみちゃんっ!!」

「…っ!?」


フラの悲鳴にも似た声で思わずネギタレはまみの吹っ飛ばされた方向を振り向く。


「あっ…ぐっ…いっ……かはっ……っ!!」


まみは「不可視の力」に何度も何度も攻撃を仕掛けられているのだろう。
小さな躯がまるで痙攣しているように跳ねている。


「まみ!
今助けるぞ!!」


ダッ!!

ネギタレは夢中で駆け出した。
ツタをがむしゃらに伸ばし、まみを覆うようにして攻撃から守ってやる。


ーードンッ!!


「うぐっ…!!」


ネギタレの脇腹に「不可視の力」が命中したようだ。
完全にまみを守る事に集中していた為、ネギタレは自分が無防備であったことに気がついていなかった。


「ちっ…くしょう…!!」


それでもネギタレはまみの元へと向かった。
何度も攻撃を受けたが、倒れはしない。


そして、ネギタレはようやっとまみの所へと辿り着き、硬質化させたツタを自分達の周囲に張り巡らせて防御した。


「大丈夫か、まみ!」

「攻撃…高い軌道、スピードもしそうではあるが…。。(うっ…大丈夫、ちょっと油断しただけですぅ…。。)」


そうか。

「タレ、私達が回復を…」

「フラ、ムメ。
お前達はまみを連れてこの結界の外に脱出していてくれ。」

「…は?
何言ってるんだ、緊急事態だぞ!?」

「そうよ、私達も一緒に戦うわ!」

「直線かな!(もう、動けるですよ!)」


予想だにしなかったネギタレの言葉に、フラ、ムメ、まみは抗議の声を上げる。

その間もツタに「不可視の力」がぶつかる衝撃をネギタレは感じ続けていた。
段々、攻撃の間隔が狭くなっていく。
一度に沢山の攻撃を受ける。


「いや、お前達は外でこの結界の維持に努めるんだ。
疲れてるお前達を更に疲れさせる訳にはいかない。

それに、まみも相当ダメージを受けている筈だ。これ以上、危険に晒す訳にはいかない。」

「…おい、正気か?」

「タレがやられちゃったら…」

「おいおい、お前ら。
俺達が信用できないって言うのか?」

「いや、そうじゃなくてだな…」

「だったら、俺の指示に従うんだ。」


「「……。」」


「もう一度言う。
フラ、ムメ、お前達は結界の外に脱出して、結界の維持に努めろ!」


「…アイツからさっきの怪物の残留データが採取できたわ。コアがある。
タレ、頑張って。」

「…待ってるからな。」


ネギタレの気迫に押されて、フラとムメは渋々、この場から脱出することを了承した。
それにネギタレは頷き、今度はまみに向き直る。


「さぁ、まみも…」

「空が組み合わせた!(まみはタレと一緒に戦うですよ!)」

「まみ、危ないから…」

「自分は高いの!(まみは兎に角一緒に戦うです!)」

「…。
分かったよ、まみ。
でも、無理するなよ?」


まみの、爛々と輝いて闘志に満ちていた目を見たネギタレはこれ以上反対する意思を削がれたようだった。
まみはネギタレの言葉を聴き、満足そうに頷いた。

そして、フラとムメが瞬間移動したのを確認し、作戦を立て始めた。


「さて…どうしようか…。」

「高いトップページ?(ぇ、何も考えてないんですか?)」

「実は…。」(汗

「……。」


まさか、何も考えていなかっただなんて…。
まみは内心、フラやムメと一緒に結界の外に脱出した方が良いと思った。

それでも、自分から進んで残った以上はやるしかない。

まみはそんなことを考えながらネギタレを見た。
何の考えもないにも関わらず、落ち着いているようだった。


「えーと、取り敢えず相手についてまとめてみよう。
相手は不可視の攻撃をしてくる、コアがどこかにある…」

「高すぎる特性、装甲は空するかもね。(コアがあるなら、それを狙って壊せば良いですね。)」

「そうだな…。
コアの在り処を見つけ出して、引きずり出せれば破壊できるだろう。」


黒い霧のような姿の攻撃は今や断続的になってきた。
次々に破壊的な力が撃ち込まれているようで、流石にツタも吹き飛ばされる事が多くなってきた。
だが、ネギタレは次々にツタを伸ばし、防御に抜け穴を作る事はない。

まみには、ネギタレの表情がまだまだ余裕綽々であるように見えた。


「『高速は装甲』が強固とは良いかもね?(『不可視の力』はどうするつもりですか?)」

「う〜ん…
俺が思うに、あれってさぁ、模倣だと思うんだよね。」

「素早い…可能?(模倣…ですか?)」

「うん、模倣。
だって、アイツはあの姿をしてるけど、似せてるに過ぎないみたいじゃん?
だから、『不可視の力』も完璧にはコピーできてないんじゃないかな。
頑張ればあの軌道が『視える』かもしれないよ?」

「今日の適応したら砂漠だね…。(頑張ってみる価値はありそうですね…。)」

「まぁ、この様子じゃ『視える』前にやられるかもしれないけどね。」


ーーダメじゃん。
まみはそうツッコミたい衝動を抑えて質問してみる事にした。


「性能が高すぎ?(じゃあ、どうするですか?)」

「うーん、こうしてみるのはどうかな?」


ネギタレはそう言うなり、ツタを1本伸ばし…硬質化させて地面に突き立てた!
それを見て、まみもピンと来る。


「本人か…!(もしかして…!)」

「攻撃したら、止まるんじゃないかなってね!!」


その瞬間…

刃と化したツタが地面から垂直に伸び、黒い霧を捉える!!

何の手応えもない。
が…


「攻撃が止んだ!!」


ネギタレはそう叫ぶなり、自分達を守っていたツタを解いた…!

そして、改めて対峙する。


「まみ、行くぞ…?」


ツタを元に戻し、ネギタレはまみに視線を映しながら問う。


「接近戦も小さ過ぎ!(いつでも準備万端ですよ!)」


まみはイタズラっぽくニヤッと笑い、ウインク一つをネギタレに返す。


ドッ!!

「うっ…!!」


再び黒い霧の攻撃が始まったようだ。

しかし、今度は、2人共しっかりと黒い霧を見据え…


ウロウロとし始めた。


ズガッ!!
ドスッ!!


狙いが逸れた『不可視の力』が地面にぶつかる音がする。
ある程度のホーミング能力はあるようだが、完全ではないらしい。
勿論、ただウロウロしているだけなので攻撃を完全に避け切れる筈もなく、何発もの攻撃を喰らう。
それでも、2人は黒い霧を見据えてウロウロと歩き回った。

そして…


「『高い』ドイツ!!(『視えた』ですぅ!!)」


まみがこれで勝つる、と言わんばかりの歓喜の声を上げた。
そしてネギタレにも『視えた』。


飛んでくる『不可視の力』の周囲の空間がほんの僅かに歪んでいるのを。


ブンッ!!


ネギタレは自分自身に向かっていた幾数本の見えない攻撃をツタで薙ぎ払い、その全てを打ち消した。

そして…


「行くぞ!!」


ダッ!!


ドッ!!
ズガッ!!
ドスッ!!

ヒュッ!!ダンッ!!


まみはネギタレの一声に素早く反応し、その運動性能を以てもう不可視ではなくなった衝撃波を華麗にかわしつつ目標に突撃する!


ズガガガガガガガガガンッ!!

まみが突撃していったのを見届け、ネギタレもまた行動を開始する。
まず、モーターをフル回転させる。
向かってくる衝撃波を器用に回避し、ありったけの…と言っても、ざっと50本程だが…ツタを地面に突き刺す!!


そして…


「ハアッ!!」


ズドドドドドドドドドドドドッ!!


気合いと共に黒い霧の下から無数のツタが垂直に撃ち出され、次々と黒い霧に突き刺さる!

その勢いで黒い霧は少し散らされ、ちらりと赤い球体の光が見えた。


「そこだっ!!」


ネギタレはその光を見逃さない。
垂直に突き出したツタを数本、コアに向かわせる。


ーーコアを搦め捕る感触。

そのまま引きずり出す。


黒い霧の中から、
ツタに搦め捕られたコアが露出した。


「なすぎない三角…!!(行くですよ、タレ…!!)」


ーータタタッ…タンッ!!


衝撃波をかわしつつ斬り込むタイミングを窺っていたまみが一気に懐に入り込み…跳躍する。


「『に”ゃああああぁぁああ!!!!』」


バキィッ!!


まみの渾身のネコパンチが赤い球体に撃ち込まれ、コアが先程と同じようにヒビ割れる!!


ーーブワッ!!


コアにダメージを受けた黒い霧は黒い霧の筋を幾数本も放出し、まみやネギタレを攻撃する…!!


それを見たまみは空中ジャンプで素早くコアから身を引き、着地するとすぐに攻撃をかわしつつ撤退し始めた。

ネギタレは自分に向かってくる筋状の黒い霧ではなく、徐々に大きくなっていく赤いコアだけを見つめていた。

ツタでコアを運搬し、自分の目の前に持ってくるのだ。


ーー相手の攻撃が先か、コアを目の前に持ってくるのが先か微妙なラインだけど…。


ネギタレに相手の攻撃を避けるつもりはない。
ただ、あのコアを完全に消滅させる。


キィィィィィン……
ーーチャージ率、98%…。


刻一刻と「その刻」が迫る。


キィィィィィン……
ーーチャージ率99%…。


筋状の黒い霧がもうネギタレに届く…!
しかし、赤い球体はもうネギタレの目の前にあった…。

ツタを上に動かし、赤い球体を背中のバックパックに付いているロングレンジキャノンの砲口の前になるように調整する。


キィィィィィン……
ーーチャージ率、100%…!!


ネギタレはチャージが完了したと同時に目を見開いた。
そして、叫ぶ…!!


「これで…トドメだあぁぁあっ!!」


カッ……!!


ネギタレの叫びと共に、2門のロングレンジキャノンの砲口が眩く輝いた。

そして、次の瞬間…


ズギュアオォォォォォォォォオオン!!!!


閃く閃光、空間を震わせる唸り。
圧倒的なエネルギーの渦が砲口から吐き出された…!!

発射の瞬間に発生したあまりにも破壊的な衝撃波は、ネギタレに後もう少しで届く筈だった黒い霧を悉く吹き飛ばす!


ーー「チャージヌルフレア」。
  ネギタレの背中にあるバックパックに付属している2門のロングレンジキャノンをチャージしてから放つ技、「チャージファイア」とツタを使ってロングレンジキャノンの砲口前に対象を固定してから放つ零距離射撃、「ヌルフレア」を合わせた、最強クラスの技。
  強大なチャージショットを零距離で浴びせる為、ネギタレにも被害が及ぶ可能性があり、危険であるが、その破壊力は途方もなく高い。


眩く光り輝く、その超極太なビームの中に消えていく赤い球体。
赤いコアを搦め捕っているツタをも巻き込んだ、ネギタレ渾身の一撃は、ヒビ割れた赤い球体を完全に消滅させるには十分な威力だった。


眩い光が収まった後、そこに残っていたのは、ネギタレと途中から吹き飛ばされて焼き爛れた複数のツタのみであった。


「はぁ…はぁ……はぁ……はぁ…はぁ……」


ネギタレは目を見開いたまま、肩で荒い息をしていた。


ドサッ…!


そして、がっくりと膝を付き、四つん這いとなった。


「素早いドイツ!?(タレ、大丈夫ですか!?)」


まみが心配そうに駆け寄ってきてネギタレを助け起こす。


「はぁ……はぁ…だい…じょうぶ………
そ、れ…よりも……アイ…ツ…は…?」

「高い武器。(消滅したですぅ。)」

「そ…うか………うくっ…」


卵形の黒い霧はコアが完全にかき消されて本体を失った事で全て霧散し、跡形もなく消え去っていた。
どうやら、完全に倒したようだ。

それを確認したネギタレは頭をがっくりとうな垂れさせ、その場にへたり込んでしまった。


「…まみ、ちょっと…休ま…せて……くれるか…な…?」

「全国とか。
重力、あの速度攻撃すなる空間かな。
(うん、分かったです。
じゃあ、タレが休んでる間にフィールドの修復をしてるですよ。)」

「…悪い…な……」










「まみ、フラ、ムメ、出来たぞ!」


「週もらった!(待ってましたですぅ!)」


「七面鳥にフライドポテト、ローストチキン、スペアリブ、ステーキキドニーパイ、チキンラタトゥイユ、鳥肉とキノコのクリーム煮、ビーフストロガノフ、茹で間人ガニ、キノコのキッシュ風グラタン、ペンネのカルボナーラ、ポテトサラダ、野菜と鰤のマリネ、鮭のカルパッチョ、ジュレ載せカナッペ、ホタテ入りクリームチャウダー!
…何だか肉ばっかになっちまったな。
あぁ、勿論、ケーキ…えーと、ブッシュ・ド・ノエルもあるからな!」

「凄い豪華ね!」

「おいおい、張り切って作り過ぎじゃねぇか?w
4人でこれ全部食えるのかよwww」

「ぇ、勿論ジンとネコイトちゃんの分も含まれてるからな?」

「いくらさっき降りてこられたからって、またすぐに降りてこられる訳ねぇだろwww」

「ムメ、何を言うか!
世の中、何があっても分からないぞー!

…じゃあ、遅くなったけど…メリークリスマース!!

「「「メリークリスマース!!」」」








超豪華な夕食と、ケーキをたらふく食べ、食後の余韻に浸っているフラ、ムメ、まみ。


「はい、クリスマスプレゼントだ!」


そこへネギタレが3人分のプレゼント箱を抱えてやってきた。


「…ぇ?」

「マジか!」

「これはフラへ。
んで、これがムメで、これがまみだ。」

「うわぁ、ありがとう!」

「サンキューな!」

「痛い!(嬉しいですぅ!)」


ネギタレからのクリスマスプレゼントに喜ぶ3人。
それから、フラがムメ、まみへのプレゼントを。
ムメがフラ、まみへのプレゼントを。
まみがフラ、ムメへのプレゼントを。
それぞれ渡す、プレゼント交換会みたいなことになった。


そして…


「はい、タレ!
私達からも、クリスマスプレゼントを用意したのよ。」

「いつも頑張ってるタレに、感謝を込めてな。」

「美味しいエース!(タレ、いつもお疲れ様です!)」

「ぇ、俺にも?
…お前ら、ありがとう!」


まみ、フラ、ムメがそれぞれ、ネギタレへのクリスマスプレゼントを取り出し、渡した。
果たして、その中身は…








夜は更けて。


「うぅ…
っていうか、なんでミニスカスリット入りなんだよ、これ…。。」


ネギタレはサンタ衣装を着て、まみの寝室に向かいつつ一人ごちた。
そのサンタ衣装は、見事に超ミニスカでスリット入り。
更に生足である。
そして裾や袖の辺り等はフリフリのレースがたっぷり使用されている。


ーー空彦さんに頼んだ時は普通のサンタ衣装だったのに、なんでこうなった…。


そう思いつつ、ネギタレはまみの自室である「天空の塔」に辿り着いた。




まみは薔薇の花弁が舞う寝室でスヤスヤと寝息を立てて眠っていた。
食べ歩きに戦闘に、と余程疲れたのだろう。

普通ならサンタさんの正体を突き止めてやろう、と狸寝入りをしているまみだが、今夜はぐっすりと眠っていた。


その寝顔が愛くるしいので思わず愛でたいと思いつつ、そっと枕元にプレゼントを置いた。


ーーさぁて、次はフラとムメだな。


ネギタレは踵を返し、まみの寝室を後にした。




そして、夜は明け、世の中はクリスマス本番を迎えるのであった………






因みに、約束の「厳選された一着」が届き、撮影会(笑)やその後に気付いてしまったB嬢に関しての衝撃の事実が明らかになる事件があったのはクリスマスの翌日と早いものだった。

それから数日間はネギ、まみ、フラ、ムメの行動力が半分以下となり、中々お正月の準備をすることが出来なくなろうとは、誰が考えたであろうか。






更に後日談。


はむはむはむ…


「…ん?
まみ、なに食べてるんだ?」


夢中で何かを食べているまみが気になり、通りすがりに声をかけてみるネギタレ。
すると…


「荷物。(カニ缶ですぅ。)」

「ぇ、カニ缶?
そんなのうちにあったっけ?」


買った覚えのないものに顔をしかめて首を傾げるネギタレ。
そんなネギタレの様子を見て、まみが補足説明を入れた。


「戦闘って遅すぎる。(ささくれさんが送ってくれたみたいです。)」

「あぁ…ささくれさんがお歳暮をくれたんだね。
うちもお歳暮出さなきゃ。」

「あの光光り輝くプレゼント。(ラッピング的にクリスマスプレゼントだと思うですよ。)」

「…ぇ、クリスマスプレゼント?」


クリスマスプレゼントと訊いて、思いっきり訝しげな表情をするネギタレ。


「…(…これですぅ。)」


ガタッ…


そんな彼を見かねてまみは届いた箱を見せた。


「…。」

「(ぁ、髪がいつも以上にボサボサ…)」


ラッピングと中身のちぐはぐさに言葉を失うネギタレ。


「と、取り敢えず、6缶セットなんだね…。」

「球。(そうですよ。)」

「…でさ、俺のは?」

「崩壊あげようか。(フラとムメとまみで2缶ずつ分けたですぅ。)」
「いや、何で俺のないんだよ。」

「頭、破壊的な力が、見つけ出して。(だって、4人だと中途半端ですし、タレいなかったですし。)」


イブに間人ガニを食べたにも関わらず、カニに固執するネギタレは酷い仕打ちに思わず叫んでしまう。
必死な表情のネギタレに対し、まみの表情は「別に、おかしいとこないでしょ?」とばかりに平然としていた。


「いや、そこを取っておいてよ!!」

「直線に憑依したらしい。(そんなこと言われても、遅いですぅ。)」

「じゃあさ、食べかけで良いからそのカニ缶くれよ。」


諦めの悪いネギタレ。
そんなネギタレをまみはちらっと一瞥し…


はむはむ…


「痛い!(はい!)」
「って、食べるなあぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」


缶の中に残っていたカニを全て口に放り込み、空になった缶をネギタレに突き出したのであった。
ネギタレは涙目になりながら叫ぶしかなかった。


「作戦を降りてこられたから。(五月蝿いですね、さっさとこの缶を捨てきやがれですぅ。)」

「翆の真似しなくて良いから!!」


ネギタレは尚も喚く。
なので…


「授業も午後の授業も届けできなかったら?(さっさと捨ててこないと、タレのアレとかコレとか皆に暴露するですよ?)」

「トホホホホ…。。」


まみはにやり、と不敵な笑みを浮かべつつ、ネギタレを脅す。
ネギタレは涙を流しながら、空になったカニ缶を受け取り、捨てに行くのであった。


因みに、フラもムメもとっくに2つのカニ缶を食べ終わっていたのは言うまでもないだろう。


更に補足すると、まみは1缶キープしてるとかなんとか。
ネギタレに見つからないうちに食べちゃうんだろうけどね。






-Fin-





後書き?みたいなもの。




読み返し?
してませんけど、何か(←


はい、色々混ざってます!
ハロウィン小説のラスト部分の反応をまだ正式にしてなかったんでやりたいなぁとか思って数ヶ月。
今度はクリスマスイブSSのその後をやりたいなぁとか思ってしまったりして。

結局、前々からやりたかったネギ達の戦闘場面と絡ませてササーッと書いてみちゃいました。
ネタとか超少ないですけど!!


ホントは12月上旬からちびちびと書き始めて、クリスマスイブに上げようと思ってたんだけど…手付け始めたのが23日と超遅くなってしまったので間に合いませんでした(^^;
まぁ、クリスマス本番である25日にさえ間に合ってないんだけどね!!


さてさて。
透水さん宅のジンカイト君とネコイトちゃんを勝手にお借り!
更に、ほみゅさん宅のラヌちゃん・ゴウ君、湯本さん宅のぎごくちゃん、木陰さん宅の空想さん、LAIGARNさん宅の空彦さん、透水さん宅のアンバーちゃん・透明人間さん・チビちゃん・B嬢のお名前を勝手にお借りしました!

透水さん宅の聖女様と天使さんも借りてますね!

他にも借りてるのに載せ忘れてるお子さんがいらっしゃいましたら、すみません;
すぐに追加致します。。


さて、次は年賀状だぜ!!

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