メテオス擬人化小説「Lita」番外編SS Feiertag
宇宙に浮かぶ青い球状の惑星、ジオライト星。
そのジオライト星の周囲には人工衛星やら宇宙ステーションやらが浮かんでいる。
その中でも、ジオライトの地上から伸びる軌道エレベータ、「コスモターミナル」で繋がれた5階建ての宇宙ステーション--通称「スカイハイ」は宇宙港を併設している唯一の宇宙ステーションで、規模も宇宙ステーションの中で最大級を誇る。
当然の如く、様々な店が出店されており、公園等の憩いの施設も充実しているので、ジオライト星人のみならず他星人でも賑わっている場所となっている。
因みに、「スカイハイ宇宙港」は何らかの理由で本星の宇宙港に停泊することができない事情を持った船舶が停泊出来る宇宙港として建設されたが、上記の通り店や憩いの場が充実していたり、コスモターミナル内や「スカイハイ」から望める廃棄コロニー「アウタースペース」で行われるF-ZEROレースの観戦ができたり、とあまりにも観光地として発展してしまった為に、今では他星からの直行便がある程である。
そんなジオライト宙域に浮かぶ巨大宇宙ステーション「スカイハイ」の2階、メインストリートをその3人は歩いていた。
1人は深い海のような蒼い髪に紫の宝石のようなものが額にある、2対のヒレが印象的なオレアナ星人の少女。
1人はスカイブルーの髪に水色の角カチューシャが印象的なジオライト星人の少女。
1人は特徴的な赤茶色の髪とツバの広いカウボーイハットが印象的なアナサジ星人の少女。
3人は今まで買い物をしていたらしく、お土産と思しき紙袋やらレジ袋やらを持っていた。
「ねぇねぇ、何時か分かる?」
「今ねぇ…10時25分ね。」
「もうそろそろ集合場所に行った方が良いね。」
オレアナの少女の問いにジオライトの少女が腕時計を確認して答える。そして、それを受けてアナサジの少女が言葉を紡ぐ。
「うん、そうね。ギリギリだけど、大丈夫かなぁ…?」
「まぁ、平気でしょ。どうせ、まだ皆集まってないだろうし。」
「レナウちゃん、あまり気にしなくても大丈夫だと思うよ〜。仮に全員集合してたって、怒られる訳じゃないしさ!」
ちょっと心配そうなレナウと呼ばれたオレアナの少女にジオライトの少女は軽く答え、アナサジの少女もそれに同意する。
そんなことを話しながら、目的地…1階の集合場所へと歩いて行くのであった。
だが、もうすぐで1階へと続くエスカレーターに辿り着く…そんな時に。
ドンッ!!
「きゃあっ!?」
如何にもチンピラっぽい4人連れの内の1人が一番端にいたレナウにぶつかって来たのだ。
思わず悲鳴を上げるレナウ。
周囲の観光客は一斉に騒ぎの大元である7人に注目した。
「おいこら嬢ちゃん、当たって来ておいて謝りもしねぇのか?おら!」
「ぇ…ご、ごめんなs」
ぶつかって来たチンピラがレナウに噛み付く。他の3人も寄ってたかってレナウにガンを飛ばしてくる。
レナウが思わず謝ろうと言葉を言いかけたとき…
「ちょっとちょっと!!
ぶつかって来たのはあんたの方でしょ!?」
「女の子にぶつかって来て『謝れ』ってないんじゃないの!?
あんたこそ謝りなさいよ!!」
アナサジの少女とジオライトの少女がすかさずチンピラとレナウの間に割って入り、怒りの声を上げる。
「ぁ!?
んだてめぇら?
やんのかこらぁ!!」
「勿論やるに決まってんじゃん!!」
「強気でいられるのも今のうちよ!」
「ぇ…ちょっと…エーデちゃん、ホルムちゃん、やめようよ…。」
売り言葉に買い言葉。一触即発どころか、もう既に殺る気満々ムード。今までレナウにガンをつけていた3人まで、今やエーデとホルムを睨みつけている。
そんな状況になれば、周囲の野次馬も増えてくる訳で。今やちょっとした人集りが出来てしまっている。
そんな中、何故か1人取り残されちゃった感じのレナウはアナサジの少女--エーデとジオライトの少女--ホルムを静止しようとするが、こうなった2人は止められないことを分かっている。
言うだけ無駄だ、と相手の標的にならないように少し戦場になるであろう空間から身を引くのであった。
「ジェットストリーム・アタック!!」
「回すぞ!!」
「ボコすぞこらぁ!!」
何処かで聞いたことのある…っていうか、ほぼそのままの技名を叫ぶと同時にガン飛ばし役の3人がエーデとホルムに襲いかかる。
好き勝手な科白を吐きながら3人のうちの2人がそれぞれエーデとホルムに殴り掛かる…が。
ドガッ!!
「ぐふっ!?」
ドムッ!!
「ぎゃん!?」
見事に鳩尾に蹴りを入れられて返り討ちにされ、後ろに吹っ飛んで行く。
「…うわっ!?」
ガッツーン!!
あの技名を叫んでいた残りの1人は、吹っ飛んで来た前方の2人を回避することができずにぶつかり、一緒くたになって勢い良く地面に叩き付けられる。
…しかも、運が悪いことに地面に後頭部を強打。痛そうな音が辺りに響いた。
「お、おい、お前ら大丈夫か…!?」
レナウにぶつかってきた1人が慌てた様子で言葉をかけるが、3人とも伸びてしまっていた。これが漫画だったら口から魂が抜けていそうである。
「てめぇら…ぶっ殺してやる!!」
当然、仲間を片付けられた怒りはエーデとホルムに向けられる。
お決まりの科白を吐きつつ2人に襲いかかる。
げしぃ!!
「………っ!?」
勢いは良かったのだが…殴る体制に入る前に2人のダブルハイキックを顎に貰い、失神したうえにぶっ飛んで宙を舞うチンピラ。そして、見事に仲間が段々重ねになっているところに無様に落下した。
人間鏡餅の完成である。
相手が悪かったとは言え、一瞬で片付けられてしまう辺り、所詮はジオライトのチンピラだった。
勝負が終わったと見るや、興味を失った野次馬は直ちに解散を始め、すぐに3人の周囲からいなくなっていた。
「ちょっと時間かかったね。」
「じゃあ、行こっか!」
「う、うん、そうね…;」
平然としている2人に半ば困ってしまうレナウであった。
3人がその場を離れようと1歩を踏み出そうとした時…
「はっはっはっはっは!!
麗しきお嬢さん方、私が来たからにはもう大丈夫☆
とぅ!!」
「ぇ!?」
「だ、誰!?」
「な、何なの!?」
妙に爽やかな科白を発し、唖然とする3人の前にスッと現れたのは…
変身ベルトのようなものや紺の革ジャン、白と薄氷色のブーツ、緑レンズのゴーグル、爽やかな水色の長いスカーフと…如何にもヒーローっぽい出で立ちの筋肉質の男性。
服の色合いや額のマーク、頭の1対のアンテナから見るに、どうやらビュウブーム星人のようだ。
「悪人など、この烈風戦士サイクロマンが成敗してくれるわっ!!」
シャキーン!とポーズを決めると、何故か後ろで爆発が起こるお決まりの演出が。いつ仕込んだのやら。
ともあれ、突如現れた「烈風戦士サイクロマン」と名乗る妙な男に…
「変態は黙ってろ!!」
「あんた…空気嫁!!」
メキッ!!
「ぶっ!!」
あまりのアレさに呆然としているレナウを横目に、エーデとホルムがツッコミ(?)を入れつつ揃ってサイクロマンの顔面にストレートを叩き込む。
その衝撃で頭の周りに星が周回し始め、鼻血を垂らしてクラクラと千鳥足になったが…それでも何故か爽やかだった。
「今のうちに…!」
そんな変態…いやいや、サイクロマンに何だかよく分からない危機感を感じた3人はここぞとばかりに走り出す。
地上を全速力で走るのが苦手なレナウはエーデに手を引かれて、レナウの足が縺れないように速度を調整しながら…。
「あれ、どうしt」
「ぁ、ヘルツ!良いから、一緒に来て!!」
「おいおい、何処に行くんだよ!?」
エスカレーターを駆け下りたところに偶然いた、黄色い髪の優男のようなワイヤロンの男性--ヘルツも訳が分からないまま一緒になって走って行く。
人をジグザグに避けつつ走り抜いて行くが…
「待った…、疲れた…。」
100m程走った所で、ヘルツがまさかのダウン宣言。
しかし…
「もう、しょうがないんだからっ!!」
グイッ!
「Σ…っ!?」
ホルムが手を引っ張って行って、尚も走らされ続けるヘルツなのであった。
もう既にグロッキー状態。
今の彼には言葉を発する余裕と気力さえ残っていなかった。
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「ここまで来れば、もう大丈夫でしょ。」
「そうね。」
「…ヘルツ、大丈夫?」
「はぁ…はぁ…はぁ……。。」
暫く走った後、とある公園で休むことにした4人。
ホルムも少し疲れているし、レナウにも疲れの色がありありと見えている。しかし、それ以上に疲労困憊したヘルツはベンチに座り込んで肩で息をしながら俯いていた。
レナウが心配そうに声をかけるが、依然返事をする余裕は何処かに置きっぱなし。
「…それにしても、レナウちゃん以上に体力がないとはねぇ…」
「まぁ、しょうがないね。普段は電子空間にいるんだからさ。」
ホルムは彼の体力の無さには驚かされていた。
エーデも体力が無いことは知らなかったものの、普段が普段なので分からないでも無かった。
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「ところで、何でその格好のままなの?」
「あぁ、それがよく分からなくてねぇ、レナウちゃん。
そこら辺にあった実体化プログラムを使ってみたら見事、この通りって訳さ。
まぁ、俺は気にしてないけどね。」
「スカウターもちゃんと装着したままだね。
誰の戦闘力を測るの?」
「いや、測るような場面に出くわさないと思うよ、エーデちゃん。
っていうか、何処でそのネタを!?」
「へっへ〜ん、内緒〜。」
暫く休んで、ようやくヘルツの体力が戻って来た頃、レナウが疑問に思っていたことを口にする。
エーデの思わぬネタ振りにちょっと驚くヘルツであったが、まぁそれは良いとして。
「そこら辺にあった実体化プログラム」はきっと置き土産だろう。多分。
そのプログラムは電子の空間にいるときの容姿のまま実体化させるプログラムのようだ。
ある意味特殊…というか、レアなものかもしれない。
「…ところで、ヘルツさんって身長何センチ?」
ホルムが表面上は何となくを装って、疑問を口にした。
ヘルツとは星間通信の際に会ってはいたが、実体化した状態に会うのは初めてなのだ。
「ホルムちゃん…俺、そのこと気にしてるからあまり触れないでくれるかな。。
…気になるんなら一応言うけど。
173センチ…。」
「へぇ、やっぱり?あまり変わらないなぁって思ってたんだ♪
因みに、私、168センチなのだ!」
「ぅ……。
いや、リアルに凹むんだけどなぁ…。」
予想はしていたものの、教えてみるとやっぱり抉られるヘルツであった。
さしもの腹黒ドSも気にしていることを言われると心が痛む。
「ヘルツ、元気が戻って来たみたいだから、そろそろ行こうよ?」
「そうね、もう皆待ってるだろうし。」
そんなヘルツの様子を見たレナウの一声によって、4人はベンチから立ち上がって集合場所へと向かうことにした。
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「皆、お待たせ〜!」
4人は集合場所の待ち合わせスポット「翼桃玉像」に近付いたとき、知り合いの一団を見つけたエーデが声をかけた。
すると…
「…ぁ!!
もぅ、皆さん遅いですよー!?」
「ふふっ、まぁ良いじゃない。その為に集合時間を早めに設定しておいてあるんだし。」
いつもの作業着姿とは打って変わってカジュアルなファッションに身を包む銀髪のメックス星人の少女--Mk-2020号、通称「ツレヅレ」が待ち切れないとばかりに声をかけた。
普段は小心者で恥ずかしがり屋の彼女だが、テンションが上がっているらしい。
その横で水色の髪のジオライト星人…の女性--リサが穏やかそうな微笑みを浮かべてツレヅレの気を落ち着かせる。
「でもさ、リサちゃん。迷子になったツーちゃんは兎も角、俺達、30分は待ったぜ?
まぁ、レナウちゃんとエーデちゃんとホルムちゃんは良いとして、ヘルツはもっと早く来るべきだよなぁ?」
「違うッ!!遅く来たくてこうなった訳じゃないッ!!
これには訳がだなぁ…」
「ぁー、はいはい。分かったよ。言い訳は後で空き瓶にでもぶちまけてな。」
リサの言葉を受けて、オフなのに青い軍服を身に纏った黒髪のコロニオン星人の男性--ドラッへがヘルツを挑発する。
ヘルツは必死に弁明するが、ドラッへは聴く耳を持たない。
このようにして、この2人は同い年でライバル意識でもあるのか、度々張り合うのだ。
「ドラッへ様は常に、ヘルツ様をはじめ、男性の方には厳しいのですね。
リヒター隊長には従順なようですが…。」
「しょうがないんじゃない、ナミちゃん。
コイツ、女たらしだし?」
「おぃおぃ、それはお互い様だろ?」
そんな様子を見ていた、黒髪のグランネストの女性型アンドロイド--G-RN73ST -Ver.4444MD、通称「ナミ」がクスクスと笑いながら言う。
そんなナミに返事をしつつ…今度はヘルツがドラッへを挑発する。
ドラッへはその挑発を買い、またヒートアップしそうになったが…
「まぁまぁ、やめないか。折角の休暇だ。」
「おk、りょーかい!」
「了解しました、隊長。
本日1日、自粛致します。」
見かねた濃紺髪のオレアナ星人の男性--リヒターにやんわりと注意されて2人の口論は止まった。
「全く、ドラッへはカタイなぁ。」
「ドラッへ、軍人口調も和らげてみてはどうだい?」
「…そうすることにします。
上官だと意識してしまうから、いけないんでしょうか…。」
いつの間にか話に加わっていたツレヅレに突っ込まれ、リヒターの提案に乗ることにしたドラッへであるが、上官であるリヒター相手に、まだ丁寧語口調であった。
「ところで、セルヴァは何処に行ったんだい?」
「アセト君もいないみたいね。何処に行ったんだろ。」
「あぁ、そうそう。アイツら、ゲーセンに行くとか言って、一足先に下に降りて行ったよ。
確か…『ゲームワールド ブラーボ』だったっけな?」
「ま、そんなとこだろうと思ってたよ。」
ヘルツとホルムが2名程、集合場所にいないことに気付く。
行方を知っていたドラッへがそれに答える。
それを聞いてエーデがやっぱりね、という顔をして肩をすぼめた。
「リヒターさん、もうそろそろ行きませんか?」
「あぁ、そうだな。アセトとセルヴァを拾ってから行けば…丁度予約した時間くらいになりそうだ。
よし、皆。行こうか。」
レナウが問いかけると、リヒターは左腕の時計を確認しながらそう言った。
「楽しみですーv」
「あれ、ツーちゃんって料理食べれたっけ?」
「ツレヅレ様は食べ物を摂取することが出来ますが、必ずしも摂取しなければならないという必要はないのです。」
「そっかぁ。結構便利な体だよな。」
「そんなこともないんじゃない?
結構不便な所ってあるだろうし。」
「そうね。体質って、それぞれ便利だったり不便だったりするわよね。」
ツレヅレがリヒターの横まで行った代わりに、ナミがヘルツの疑問に答えるのを聞いていたレナウとリサが話に加わる。
そんなこんなで、リヒターと並んで歩くツレヅレを先頭に、団体となってコスモターミナルのエレベータへと向かって行く一行。
一行が軌道エレベータに着くと、既に多くの地上に行く客が並んでいた。
このコスモターミナル・軌道エレベータは2台である。地上と「スカイハイ」を片道10分で結び、定員は50名以上とは言え、流石に不便ではあった。
暫く並んでいて、ようやく一行はエレベータに乗り込むことが出来た。
たちまち満員になったエレベータは扉を締めて下降を開始する。
「ほぅ、全くGを感じないな…」
「流石はオレアナ・ワイヤロン・グランネスト・メックスが建設に協力したエレベータだね。」
軌道エレベータは降下していることさえ感じさせない程、静かに滑り降りて行く。
その様子にドラッへもヘルツも感心していた。
「軌道エレベータ…噂通りの性能みたいですね。」
「あぁ、そうだな。もっとも、宇宙でも有数の技術力を誇る惑星の技術者が集まったのだから、当然と言えば当然であるのだがな。」
レナウとリヒターも感心し、辺りを見回していた。
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「うわぁ、これは1回戦敗退しそうなのだ…。」
「まぁ、選ばれた以上は全力でやらないとな。頑張れ。」
「セルヴァも助言してくれなのだ〜…。」
「分かるものがあったらな。」
その頃、セイデンシティの「コスモターミナルビル」内にある「ゲームワールド ブラーボ」では、水色の髪に角付き帽子をかぶったジオライトの青年--アセトがカウボーイ風の青年--セルヴァを伴って、「くま」というクイズゲームに興じていた。
「…!?
な、なんぞこれなのだ!!そんなの知らねーのだ、グロ問なのだ!!」
「ん、503年だろ?」
「マ、マジなのだ!?」
「あぁ、マジだ。」
アセトが騒いでいたのは…あぁ、どうやら、タイピング問題のようだ。
画面には英数のキーが並んでいる。
「…すげぇ、単独正解なのだ!!
うわっ、正解率2%って…。」
「…親父が親父だからな、耳にタコができるくらい聞かされたさ。
まぁ、そんな鬱陶しいと思っていた知識がここで役に立つとは、驚きだ。」
「…ぁ、これは分かるのだ。
んと…にゅうさんきん と…。」
そんなこんなで、アセトは答えて行く。
…分からない問題も結構あるようで、スレスレで2回戦進出したようだ。
その2回戦は問題の引きが良かったようで、危なげなくはないが、順調に正解を重ねて行く。
そして、1位…即ち、区間賞を取って3回戦へ。
「ぉ、いたいた、面白いバカ二人。」
「うわ〜ん、バカ言うななのだ!!」
アセトが無事に2位で3回戦を突破して決勝進出を果たした頃、一行がぞろぞろとやってきた。
ヘルツの言葉に泣きながら反論するアセト。だが、すぐに真剣な面持ちで画面に向き直った。
「ぁ、決勝なんだね。
頑張ってね!」
「レナウちゃんとリサさんがいれば優勝は間違いないよね!」
レナウとエーデが画面を覗き込んでワクワクとした様子で話しかけた。
その後ろで、ヘルツも興味津々な様子で覗き込んでいる。…というよりも、寧ろ一行が全員、興味津々に覗き込むものだから大変なことになっている。
どのくらい大変なことになっているかというと、隣りのサテライトのプレイヤーがこちらを向いてギョッと目を丸くしているくらい。…もっとも、元から点目の人であったが。
その後、レナウ・リヒター・ヘルツ・リサの活躍で見事に優勝を決めたのであった。
「優勝しても組、上がらなかったのね。」
「前回と前々回が酷かったから仕方ないのだ。」
「くま」を終え、ゲーセンを出て目的の場所へと移動する一行。
そんな彼等の前に姿を現したのは…
「はっはっはっはっは!!」
「ぇ…?」
「げっ…。」
「またぁ〜?」
聞き覚えのある…っていうか、さっき聞いた気がする笑い声に顔をしかめたエーデとホルム。そして怪訝そうな表情をするレナウ。
そしてその声の主が姿を見せ…
「はっはっはっはっはっh」
ズルッ
「…!?」
姿を見せた…と思ったら、着地の際に滑って偶然開いていたマンホールの中、下水道へと落ちて行ってしまった。
…多分あれは、先程の変態だっただろう。
「…今のは、何だ?」
「さぁ?
気にしたら負けなんじゃね?」
「じゃあ、ワガハイ負けたのだ…。」
「…でも、何か変なのがいた気がした感は拭えないな。」
「っていうか、見事に落ちて行ったわね。」
「ホント、何だったんでしょうね…。」
「皆様、ここは見なかったことに致しましょう。」
一瞬の出来事に、初見の8人は唖然呆然としたが、取り敢えず放っておくことにした。
っていうか、今のは流石に先程遭っている3人ですら呆然としたが。
「う〜む…まぁ、何がしたかったのかは分からないが…置いて行っても大丈夫だろう。
皆、行こうか。」
「賛成〜。」
てな訳で、リヒターの言葉に満場一致で賛成したのでその場を去った。
その後はアスファルトを破って地中から出てくることも無かったそうな。
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「さて、到着だ。」
「へぇ…良さそうな店じゃん。」
辿り着いたのは、セイデンシティ郊外にある一軒の喫茶店。
喫茶店とは言え、駐車場があり、11人が居座るには十分な規模もある店が今回の目的地だった。
白を基調とした外観は中々に小洒落た感じ。
…出入り口の横に立っている「本日のランチ」が書かれた小型の黒板のようなもの以外は。
「んと…今日のランチは…?」
「『リモチューブ肉とビーワルツ産蜂蜜の甘口ドリアンうどんディジェ風 ルミオススープアロッドの薫り付き 980円』
……なんぞこれ。」
「唯のごった混ぜみたいなもんか?」
「美味しそうだなぁ!」
「エーデちゃん…。」
「本日のランチ」を見に来たエーデ、セルヴァ、ヘルツが盛り上がる。
そんな3人と共に、一行は入店した。
「いらっしゃい。」
厨房にいた濃い黄色の髪の、中年辺りに見える男性がこちらへ出て来る。
茶色いハットこそかぶっているものの、孔雀緑色の目と菱形の飾りからワイヤロン星人ではないだろうか。
とてもキザで落ち着いた雰囲気がする。
「予約を取ったリヒターだ。」
「あぁ、リヒターさん。お待ちしておりましたよ。」
どうやらリヒターは予約を取っていたらしい。
店のマスターらしい、ワイヤロンの男性に席へと案内され、着席する。
店内の内装も中々にお洒落、尚且つ不思議なものが多く、一行はキョロキョロと辺りを見回していた。
「内装が珍しいのですか?」
「えぇ。興味深いものが沢山あって、面白いですね。」
「それはどうも。」
レナウの言葉にマスターは優しげな微笑みを浮かべて返す。
「ランマスター、注文、宜しいですか?」
「えぇ、どうぞ。
…何に致しましょう?」
リヒターの言葉に、ブーツカット状のシャツの袖の中から電子的なモニターのような伝票を取り出す店のマスター--もとい、ランマスター。
リヒターはそれを確認すると…
「じゃあ、『本日のランチ』を2つ、お願いしよう。
それと、例のアレを。」
「ご注文は『本日のランチ』お2つと、例のアレ。
以上で宜しいですか?」
「あぁ。」
リヒターもランマスターも何かありそうな微笑みを交わして注文を終える。
ランマスターは伝票を袖にしまうと、付け燕尾を千切って手の中で転がす。すると、手の中からガラスのコップが姿を現した。それを人数分揃え、コップを袖の中でガサゴソやると…水が入っている。
「す、すげぇのだ…。」
「手品みたい…!!」
「ど、どうなってるんだ!?」
「あぁ、成る程ねぇ。そういうことか。」
一連の動作に驚いた様子で感動するアセト、エーデ、セルヴァ。同じワイヤロン星人であるヘルツは構造が分かったようである。
そんな一行のリアクションを見つつ、ランマスターは水を席に置いた後、「ごゆっくりしていってください」と言い残して厨房へと向かった。
先程千切った付け燕尾は既に再生していた。
「おい、ヘルツ。さっきの手品とあの燕尾、あれはどういう原理だ?」
「さぁねぇ?
…まぁ、言っちゃったらつまんないじゃん?」
ドラッへが一連の不思議の説明をヘルツに求めるが、取り合わない。確かに、分かってしまったらつまらないのではあるが。
「本当にランチを注文したんですね。
どんな料理なんだろう…?」
「ランマスターは、たまーに面白いメニューを作るもんでね。
私も、今日の料理はどんなものか皆目見当がつかないのだが、そんなにマズいものを作る訳ではないからね。」
レナウとリヒターがランチについてあれこれ憶測を話している横では…
「ヘルツさん、既婚者なんだよね?」
「お相手はどんな人かしら?」
「ヘルツの結婚生活って見たこと無いけど、どうなんだ?」
「そこんところ、気になるのだ。」
「なっ…ドラッへ!アセト!ホルムちゃんとリサちゃんはまだしも、何でお前等に私生活を言わなきゃいけないんだ。」
ホルム、リサ、ドラッへ、アセトがヘルツの私生活に探りを入れる。普段は殆ど話をしない為、予てより気になっていたようだ。
顔を赤らめつつ、ツンとした表情で質問を退けるヘルツを見たエーデがクスクスと笑いながら…
「ふふっ、ヘルツってツンデレだね?
セルヴァみたいv」
「って、エーデちゃん!!
俺はツンデレじゃない!!断じてないんだからなぁッ!!」
「えぇっ!?
俺がツンデレって…。そうか、俺はツンデレなのか…。」
エーデの一言にヘルツは増々ツンツンとし、セルヴァはちょっと複雑な顔をした。
厨房からその様子を聞いていたランマスターは「やれやれ、賑やかなお客さんだ」と何処か父親じみた表情で一人ぼやく。
そんな独り言は誰にも聴こえてはいないようだ。
「セルヴァ様、先程から気になっていたのですが…その帽子に飾られている白薔薇は何処で入手したのですか?」
「ぁ…実は、ボクもさっきから気になってたんだ。
どうしたの…?それ。」
ちょっと凹んですらいるセルヴァを見たナミが予々疑問に思っていたことを口にし、ツレヅレも同調する。
「ん…これか?
ちょっとエーデと祭りに行ってきたんだが、その時に貰った…というか、何と言うか…うん。」
はにかんだような笑顔でそう言うと、ハットを取って飾られていた白い薔薇を皆に見せた。
エーデの顔が自然と綻ぶ。
「その様でしたら…エーデ様の右腕のブレスレットも、その『祭り』で入手したものなのですか?」
「うん、そだよ。
綺麗でしょ?」
「…良いなぁ。ボクも行きたかった。」
ナミの指す“ブレスレット”は…琥珀のような透明感溢れる茶色の珠が付いたもの。バンドの部分は茶色の植物か何かで編まれているようだ。
ツレヅレはその綺麗な珠に釘付けになっていた。
「凄く良い雰囲気だったよ!
セルヴァは何か照れてたけどねv
…ぁ、そうだ、皆にお土産があるの、まだ渡してなかったから、後で渡すね!」
「ねぇ…それって………。
次元とか時空とか、歪んでない?
だって…ねぇ。
っていうか、ここにはいない筈の人もいるし?」
「うん、気にしない気にしない♪
だって、愉しいし!」
「えぇ…。
まぁ、そうね。」
ニッコリして嬉しそうに言うエーデに、リサが一言訊ねる…が、その返答に、苦笑しつつも何故か納得してしまうリサ。
まぁ、良いんだけども。
「そうそう。リサちゃんも細かいことは気にしなくて良いよwww
部外者だろうと、知らない人だろうと、たまにはこういうんも良いんじゃない?」
「ふふっ。
ヘルツ、これは全然細かいことじゃない気がするんだけどなぁ。
それに、部外者は貴方でしょ?」
「レナウ、君もね。」
エーデの考え方に相槌を打つヘルツ。
そんなヘルツに笑いながらツッコミを入れるレナウだが、そこを更にリヒターに突っ込まれるのであった。
彼等は結構慣れないながらも楽しんで入るようだ。
「そういえば、お前とレクトンって同じワイヤロンだけど、何か関係はあるのか?」
「んー?
仕事が仕事だから、彼女とは一緒にはならないんだけど、ネッサ中に偶然会ったことがあってねー。
友人になったのはそれからなんだよね。」
「ところで、彼女は今何処に行っているのだろうか…?」
「さぁねー?
まぁ、帰って来るから心配すんなって。」
「さぁ、お待たせしましたね。
『本日のランチ』、リモチューブ肉とビーワルツ産蜂蜜の甘口ドリアンうどんディジェ風 ルミオススープアロッドの薫り付き 2つです。」
どうやら、ドラッへ、ヘルツ、リヒターが込み入った話をし始めたようだが、そこへランマスターがやってくる。
「や、やたら豪華なのだ…」
「記念撮影記念撮影♪」
呆然とするアセトを尻目に、色々な記録媒体を取り出して撮影を始めるヘルツ。
どうやらお土産にでもするようだ。
それからちょっとの間、撮影会が行われたとか何とか。
料理の方は…リモチューブの肉とドリアンの果肉が入った焼うどんのようだ。うどんの麺はドリアンでも練り込まれているのだろうか?元々ドリアンの果肉の色は黄色な為、練り込まれていても分かり辛いし、焼かれているので見た目では全く判別が付かない。
ビーワルツ産蜂蜜は盛りつけた後からかけられたもののようだ。甘口…はこういうことなのだろうか?
まだ疑問は残る。
そしてスープは透明度が非常に高いスープのようだ。、照明の光が反射してとてもキラキラとしている。この光り方から察するに、特殊な材料でも入っていそうではある。色は…若干青みがかっているような気がしないでもない。
アロッドの薫り…だか何だか良く分からないが、美味しそうな匂いは漂って来る。
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「ぁ〜、美味しかったね!」
「うん、美味しかったね!」
「こういうのも、全然ありね。
いけるわ。」
「これは話題性バッチリだと思わない?」
「ワガハイも良いネタになると思ったのだ!」
「いやぁ、あんなに合ってるものだとは思わなかったなぁ。」
「あぁ、良い意味で予想外だったな。」
「不思議なもんだ。
これ、レパートリーに加えたいけど…流石に無理がありそうだな、材料。」
「とても良いお味でした。」
「やっぱり、皆で食べるのって良いですね。」
「ランマスター、美味しかったよ。ありがとう。」
「美味しく食べて頂いて、何よりです。」
思い思いの感想を喋り、またしても賑やかになる一行。
リヒターの礼にランマスターは微笑みを湛えて答えた。
リヒターはそれを笑顔で返すと、皆に向き直って言った。
「さて、皆聞いてくれるかな?」
その言葉に、騒いでいたメンバーが全員リヒターを見る。
リヒターはそれを確認すると…
「今から、ランマスターが厨房を貸してくれることになっている。
だから、皆で料理でも作ろうじゃないか。」
「ま、マジなのか!?
うぇーい、何作ろうかなーなのだー!!」
「へぇ、それは面白そうだねぇ。」
「う〜ん、作るなら…お菓子が良いかなぁ?」
突然のイベントにそれぞれ沸き立つ。
と、セルヴァが…
「そうそう、エーデはダメだよ。」
「ぇーっ!!
なんでぇー!?」
「だって…。」
「うぅ…。
分かったよ〜。」
目で語るセルヴァに、エーデは渋々と了解するのであった。
そんなこんなで、早速皆で厨房に押し掛ける。
「何か…すっきりだねぇ。」
「あの…ランさん、冷蔵庫って無いんですか?」
「うちの冷蔵庫は…ここなのですよ。」
「へっ?
袖!?」
レナウの問いに、ランマスターはブーツカット状の袖を指して言う。
それを見てアセトは思わず突拍子も無い声をあげた。
「えぇ。
私の袖は便利な収納ポケットになっているのでね。
ここに入れておけば、いつでも取り出せるし、冷蔵庫は要らないんですよ。
それともう1つ…私はワイヤロンですからね。」
一物あるような感じのランマスター。
その様子に、もっと色々と訊きたかったメンツもこれ以上の詮索をやめることにした。
不思議な人だ、そう思いながら。
そんなこんなで、12人がいても丁度良いくらいの厨房でそれぞれの料理が始まるのであった。
「マスター、キャベツお願いできる?」
「えぇ、どうぞ。」
「えっ…。。
こうやって出すんだ…。」
「マスターさん、ボウルって何処にあります?」
「今出しますね。」
「本当に手品みたい…。」
「マスター様、『Blairs 16million reserve』はございますか?」
「えぇ、ありますよ。
あれは全宇宙でも1、2を争う程強力なものですから、量にはくれぐれも気をつけてくださいね。
何事にも、適量というものがありますから。」
「承知致しました。
…それにしても、マスター様は流石ワイヤロン星人と言った所でございますね。」
色々出してくれって注文が多くなるので、なにげにランマスターは忙しかった。
袖からキャベツが丸々一個飛び出してきて、まな板を転がるのを見て驚くホルム。
レナウやナミも感心しているようだった。
中々面白い。
そんな風に思いながら、各人思い思いの料理を作っていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うぇ〜い…
ようやく出来たのだぁ…。」
「アセト君、お疲れ様〜。」
皆が料理を初めてウン時間。どうやら、アセトの完成が一番最後だったようだ。
そうして、皆の十人十色、色とりどりな料理がテーブルに並ぶ。
ナミはチーズリゾットと茶碗蒸し、それに付け合わせのフライドポテト。
リサは肉じゃがと炊き込み御飯という和風。
ホルムはふわふわ卵のオムライス。
セルヴァは付け合わせやコンソメスープも付いたハンバーグステーキ、それとイングリッシュマフィンを。
リヒターはオレアナらしく(?)パエリア。それもオレアナ風のようだ。
ヘルツは煮物とサフランライス、そして味噌汁。
アセトは五目チャーハンと卵スープ。
ドラッへは具がでかく、豪快なカレーを作っていた。まさしく「漢の料理」。
ツレヅレは…何だかよく分からないごった煮のようなもの。所々焦げてるし、何を入れたのか分からないし、変な匂いがしている。
そして、やたらぐちゃぐちゃでオイルやらリコリス--甘草の匂いがしてるような気がするサンドイッチ。
レナウは…お菓子……マドレーヌだろうか?異様なオーラを放っている。お菓子の筈だが、何故か辛そうな匂いすらしてくる。もしかしなくても、これは殺人料理…殺人お菓子…?
彼女はコーヒーも用意していたが、こちらは普通のブラックコーヒーのようであった。
ランマスターはSNSスパゲティなるメニューを作っていた。ボリュームがかなり多く、大人数で食べることが前提のもののようだ。
名称はアレだが、とても美味しそうな焼きスパゲティである。
そして試食会兼撮影会が始まる。
美味しいもんは美味しいんだけど…近寄られないものもある訳で。
エーデは全てを試食していたみたいではあるが。恐るべき強靭な胃袋。
例のポーズをしながら「ウッーウッーウマウマ」なんて言葉も聞こえて気がした試食会もほぼ終わり…。
当然残ったものも出て来た。
「はーはっはっはっはっはっはっは!!」
…!!
そんな時、聞き覚えのある笑い声と共に何処からとも無く突然現れる!!
そう…烈風戦士サイクロマン(自称)が!!
だがしかし。
服やら髪やら濡れてるし、下水臭いし。中々酷い有様だった。
それでも無駄に爽やかだし、めげてないし…何か、感心と言うよりも呆れる…。
そんな風に思う人もいたりして。
「麗しきお嬢さん方、そう肩を落とさなくても良いのですぞ!!
この私が全て平らげて差し上げましょう!!」
そんな思いは露知らず、相も変わらずなハイテンションでそう言うなり、ツレヅレの料理を口に放り込む。
一行はぽかんとするやら、得体の知れない悪寒に襲われるやら、苦笑するやらでその様子を見守る。
そして…
「…うっマズッくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」」
あまりのマズさに顔が青くなる。そして涙目。というよりも、涙が滝のようにダーッと流れている。それでも無駄に爽やかなのは一体…。
サイクロマンは思わず近くにあったコーヒーをガブガブと一気飲みをする。が…
「ぶわっ、なんだ!?
何で酸っぱいんだ!?」
予想外の味に口腔内の液体を盛大に噴き出した。そして咽せ込む。涙を倍増させながら。
このコンボ攻撃が相当にキツかったのか、思わず殺人マドレーヌを全て口の中に放り込む…もとい、詰め込んだ。
「……がっ!?
うっ…からっ…マズうげぇ…ゴフッァ!?」
殺人マドレーヌの破壊力に一通り悶絶した後、やはりというか何と言うか…顔面蒼白になり、泡を吹いてばったりと仰向けに倒れた。
そしてピクリとも動かなくなる。口から魂が昇天でもしてるんじゃないだろうか、というくらいそりゃぁ見事に。
そんなサイクロマンを尻目に、レナウは不思議そうな表情でコーヒーポットから自分のカップに少しだけコーヒーを注いで飲んでみる。
「っ…酸っぱい;
どうして!?」
「うーん、コーヒーの味も匂いもしないしね。唯の酸っぱいお湯って感じ。
…っていうか、何だコレ。めっちゃキツいんだけど……。」
レナウはすっかり困惑したような表情を浮かべた。
そのコーヒーを自分のカップに注いで飲んでみたヘルツもあまりの酸っぱさに顔をしかめる。
その様子を見たセルヴァが飲んでみる。
「うげぇ………。
……あぁ、やっぱり。
これ、酢入りだね。」
「やっぱり酢…だよね。
でも、入れたのはお湯なのに。酢なんか触ってないし…。」
「誰かが入れたのでしょう。
悪戯、悪意、ちょっとした出来心。理由ならば容易に考えつきます。
もっとも、憶測の範疇を越えませんがね。」
セルヴァの言葉により、ハッキリとV入りコーヒーであることが分かる。レナウとヘルツは酢だと分かってはいたが、まさか、という思いで肯定し切れていなかったようだ。
そして、それまで静観していたランマスターが口を開いた。彼の憶測が合っていれば、果たして、誰が酢を投入したのか。
取り敢えず、犯人探しは置いておいて、ついでにぶっ倒れたまんまのサイクロマンも置いておいて、食器類の片付けをすることにする一行なのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
片付けも一通り終わって、テーブルで一息つく一行。
と、突然ヘルツが薄い長方形の箱を取り出す。
その箱には…
「ぁ、スマブラなのだ!!」
「ぇ、…ぁ、ホントだ!!
スマブラX!!」
「皆でやらないか?」
「…でも、VViiがないんじゃ…。」
有名なゲームの最新作に、アセトとホルムが食いつく。
ヘルツが皆での対戦を提案するも、レナウはハードがないことに気付くのであった。
「ボクが今から作っても良いんですが…」
「いえいえ、それには及びませんよ。
VViiなら、ここにあります。」
ツレヅレがVViiの違法製作を提案するが、そうするまでもなかったようだ。
再び厨房からやってきたランマスターが例の袖からVViiを取り出す。
そして、「私も参加させてもらいたいのですが。」と名乗りを上げるのであった。
「よっしゃ、やろうぜ!!」
「ミックミクにしてやんよ!!」
「ちょwwwエーデちゃん自重www」
燃えるドラッへに、何故かミックミクなる言葉を使い始めるエーデ。
そしてそれに突っ込むヘルツ。
また盛り上がってきていた。
「よ〜し、俺が一番になるぞ。」
「だーめ。私が勝つんだから!」
「レナウ。君、ゲーム好きだったのかい?」
意気込むセルヴァに待ったをかけたのはやる気満々なレナウ。
彼女の発言にこれまたやる気満々なリヒターが意外そうな顔をした。
そして…
「はーはっはっはっはっはっは!!
私も参戦しよう!!」
「のわぁ!!
復活したのだ!?」
サイクロマン、まさかの復活。そして参戦表明。
なんて奴だ。
そんなこんなで、準備を進め、トーナメントモードで戦うことした。
ストックは3、ステージは終点縛りでアイテムは切り札以外なし、出現率は最低の状態というルールで、明確に順位が付くまで対戦をするようだ。
「ねぇねぇ。あたしを除いて下から7人の人には、あたしのお手製料理を食べて貰うってどう?」
「ぇ、それはマズいy」
「ぉ、良いじゃん?」
「私も賛成ですね。
何かしら罰ゲームがあった方が、燃えられるというものですよ。」
「えっ、ちょ………」
困惑するセルヴァを放っとかれて、話がドンドン先に進む。
どうやら、後には引けないようだ。
そして対戦が始まる。
「ぉ、最初は俺とヘルツか…」
「ドラッへには負けないねーwww」
「ふんっ、俺だって負けねぇよ!」
こうして、ワイワイと始まるのであった。
そんなこんなで、束の間の休暇は過ぎていく。
「らりるれろらりるれろ...」
「マスター応答しろ!!マスター!!マスター!!
マスターーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「ランドマスターーーーーーー!!!!」
最後のはアレです、急に思いついたものと言わせたかったけど入れられなかったのをやっぱり入れたくて無理矢理詰め込んでみた科白。
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