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2008年3月14日 (金)

メテオス擬人化小説「Lita」番外編SS kochen

広大な宇宙に浮かぶ茶褐色の惑星、アナサジ。


惑星内に広がる荒涼とした荒れ地の、そのとある町の宿の一室で男は無意識の底から浮上した。


「…ん……。」


カウボーイ風のアナサジ星人の男…セルヴァは目を擦りながら眠っていたベッドからむっくりと起き上がる。
横のベッドを向くと、いつもそこにいる筈の彼女の姿はなかった。
まだボーッとしながら部屋を見回すセルヴァ。
年季の入った木造の壁はジオライトで言う所の“西部開拓時代”そのもの。しかし、ここアナサジでは現在でも尚このような木造建築が多いのだ。
そんなアナサジ星で見られる典型的な一室に「依頼」を終えた2人が入って来たのは、昨夜遅くのこと。
それから、食事も程々に2人ともベッドに潜り込んだのだった。


まだ眠気が完全に振り払えず、昨晩と殆ど変わっていない風景をボーッと見ているだけだったセルヴァは、何とか振り払おうとベッドから出てなにげなしに窓へ向かう。
窓はこれも西部開拓時代によくあるような、木製の扉のようなもので塞がれていた。
それを開け放ち、外を見やると…既に大陽は天高く昇っていた。


「ん〜…ちょっと寝過ぎたか……。」


眩しそうに目を細めつつ、そう呟いて窓を離れ、ベッド際に置いてあるいつものカウボーイハットを被って洗顔でもしようかと部屋を出て行った。
そういえば、彼女…エーデのハットがなかったなぁ、と思いながら。


地上に湧き出るような水は少ないアナサジ星ではあるが、流石に宿ともなるとしっかりと確保はされているようで、洗顔はジオライト星のように気軽にできるようになっているのである。
…基本的に野宿をして過ごすセルヴァ達は洗顔も命に関わる大冒険を強いられる訳であるが。
そんなことで、洗顔できるありがたみを感じながら廊下を歩いた先にある洗面所へと向かうセルヴァなのであった。


「さ〜て、エーデを捜さないとな…。」


洗顔を終え目が完全に覚めたらしいセルヴァは、エーデを捜し始める。
彼女より洗顔が先決かよ、なんてツッコミがきそうなもんだが、それは別の話。
っていうか、そんなんだったら恐らく怒られはしないだろうと思うのだが、それも別の話。


この宿は2階に宿泊する部屋があり、1階は町民やガンマン、賞金稼ぎ達が集うバーになっている。
アナサジではこういうスタイルを取っている所が多く、決まった住居を持たない者にも色々な意味で重宝がられる場所だ。
追われる身にもなっているエーデとセルヴァにとっては危ない場所でもあったりするのだが、やはりベッドがあると落ち着くし、疲れが取れるということで、不定期的にお忍びで宿に泊まることにしている。


そんな最も危険な場所であるバーのホールにはいないだろうと踏んだセルヴァは、ホール以外の他の場所を捜してみる。このバーだって、然程広くないんだからすぐ見つかるだろう…そう思っていた。だが。


「ん〜?おかしいな…。何処に行ったんだ?」


1階のホールへと続くL字の廊下に、髪を掻きながら困ったような表情でその場に立ち尽くす。
エーデがいそうな場所や部屋を捜してみたが、彼女は見つからなかったのだ。


まさか、1人で外に行っているのではないか…。
そんな危惧が頭を過る。


…でも、無闇にフラつくと危ないてことは何よりもエーデ自身が分かってるだろうし、大丈夫だよな。取り敢えず、まだ行ってなかった所でも見てみるか…。


そう結論を出し、早速エーデ探しを再開する。


「…ん?」


だが、すぐにセルヴァの足は止まる。
彼の足を止めさせたのは、何処からか漂って来て鼻孔をくすぐる、香ばしくて美味しそうな匂い。
何で今まで気付かなかったんだ、と自分の不注意さ加減に凹みつつ、耳をそばだててみる。
すると、ここまでも聞こえて来るホールの喧噪の中に、肉を焼いているであろう音が微かに混じり聞こえる。
ステーキでも焼いているのだろうか、と思わず匂いのする方へと歩みを進めて行く。


辿り着いてみると、そこは調理場だった。バーのマスターが調理に使う所らしい。このような調理場を持っている所は結構少ないので珍しかったりするのだ。
早速、調理している主は誰かと、セルヴァは何故か漫画のキャラのような仕草でそぉ〜っと調理場を覗いてみる。すると。


「ぁ。」


なんと、ステーキを作っていたのはエーデだった。何処から入手して来たのか、エプロン姿だったりして。
キッチンテーブルの上には添え付けのグラッセか何かにしてある野菜の乗った皿と、丸いパンが幾つか乗った皿があった。
そして、ステーキを野菜のある更に盛りつけしている所だった。


「…あ、おはよう。ようやく起きたんだね。」


エーデがセルヴァに気付き、笑顔で話しかける。
エーデの笑顔はやっぱ良い…そんなことを思いながら


「へぇ、料理作れたんだ?」

「うん、ちょっと作ってみたくなったんだ!どう…かなぁ?」


エーデは歩み寄るセルヴァに聞いてみる。やっぱり不安なのだろうか、可愛いなぁとか思いつつ。


「綺麗に出来てて凄いじゃん!」


と驚く。演技ではない。本当に驚いたのだ。
皿の上に乗っているのは、綺麗に調理された料理。湯気を上げるそれはとても、凄く美味しそう。


「初めて…だろ?」

「うん、初めてだね。グラッセの作り方とかはマスターに教えて貰ったんだけどね。」


エーデはしっかり料理が出来たからか、嬉しそうな表情をしていた。
2人が出逢ってすぐの頃に、エーデが料理を作ったことがないという話をして以来、13年間ずっと料理経験のあるセルヴァが料理を作っていた。
そのことを、エーデは密かに引け目を感じていたのかもしれない。だからなのか、余計に嬉しそうに見受けられる。


「それじゃ、食べよっか!」

「あぁ!」


鑑賞会もそこそこに、折角の料理が冷めないうちに昼食にすることにした。
フォークとナイフ、バターナイフを用意して来て、ちょっと離れた所から2人分の椅子を引っ張って来て、仲良く並んで座る。


「いっただっきまーす!!」

「いただきますっ!!」


そして二人は食べ始めるのであった。
ナイフを入れるとすんなり切れる肉。そして溢れ出る肉汁。
この柔らかさ、結構良い肉なのではないだろうか…そう思うセルヴァであった。


「それにしても、焼き加減も俺好みだし、凄いじゃないか!」

「そう?ありがとう!」


エーデがここまで焼き加減の調整が出来るとは…。
才能、なのだろうか。…と思いつつ、嬉しそうな笑顔を見れて幸せであった。この後の珍妙な事件に巻き込まれるとも知らずに。


「美味しいよ、本当に!」

「すっごく嬉しい!あたし、料理のレパートリーも増やしたいし、これからもどんどん練習するね!」

「あぁ、そうだな。俺も手助けするよ!」


食事の美味しさと料理が上手く出来た嬉しさも相まって、話をどんどん進めて行く。取り返しのつかないことにならなければ良いのだが…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


食事を終え、一旦部屋に戻った二人。もうすぐここを出て次の「依頼」を受けに行くのだ。
とは言っても、急襲された時のことを考えて荷物は最低限しか持ち込んでないし、持って来ているものも昨晩はすぐ寝てしまったので散乱しておらず、荷造りは終わっているに等しい。
なので、愛銃の手入れとかゆっくりくつろぐ時間である。


「ねぇ、次の依頼ってどんなの?」

「ん?んっと〜、今の時間なら…そうだな、ここから大陽の方角に少し行った所の、タスクって町での依頼なんだが、要人が夜中に隣町まで行くから護衛をして欲しいってことだ。
…隣町っつても、夜が明ける頃に着くかどうか微妙な感じの距離らしいが。」

「随分と長丁場な護衛になりそうね。またダークレイにも頑張ってもらわなくちゃね。」

「あぁ、そうだな。」


エーデがベッドに座って愛銃「Sadness Requiem」に弾を装填しながら訊く。セルヴァもベッドに背をもたれて愛銃「Desert Falcon」の手入れをしながら答える。いつもの光景だ。
それから間もなくして、愛銃の手入れも済んだ二人はゆっくりとくつろぐ。


「うーん、くつろぐのは良いけど、ヒマだなぁ。」


セルヴァはベッドに横になってまた昼寝をしているようで、エーデは暇そうであった。独り言でも言ってみるが、退屈は変わらない。
何か面白い事でもあれば良いのになぁ…そんなことを思うエーデなのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…ん、寝ちまった…のか?」

「ぁ、おはよう♪」


目を覚ましたセルヴァに、エーデは昼飯前と同じような声をかける。

どうやら、寝てしまったらしい。寝足りなかった…という訳でもないだろうに。
それにしても、エーデの声と来たら、何か嬉しそう、っていうか楽しそうだな。こういうときは大抵、変なことになっていたりするんだよな。エーデじゃないが、嫌な予感がする…。
っていうか、何か風通しが良いような…。

まだボーッとしている頭でなんとなしにそんなことを思っていたが次の瞬間、セルヴァの思考一気に現実に引き戻されるのであった。


「今日ってこんなに涼しかったっけ…
Σって、えぇ!?そ、そりゃ何だ!?」


問いかけつつエーデを見たセルヴァは驚愕した。
エーデはいつもの服ではなく、メガドームの魔女っ子やサボン、フロリアス辺りの子が着そうな乙女チックな白い服を身に纏っていた。


「ねぇ、あんたも可愛くなってるよv」


エーデの姿を見て硬直してしまったセルヴァに、エーデはニコニコしながらそう言い放つ。
思わずセルヴァは自分の体を見てみると…。


「な、なんじゃこりゃー!!!!!!!!!!!!!!!!」


思わず叫んでしまった。まぁ、下階には届かないだろうが。
セルヴァもエーデが身に纏っているのと同系列の服に変わっていた。しかし、その色は黒。


2008_3_14





こんな感じで。
ふたりはサジキュア Max Heart


「そういえば、ジオライトのアニメで女の子が似たような服着て戦ってる奴があったよね。」


完全に硬直してしまったセルヴァにエーデが冷静に話しかけるが、セルヴァは今それどころではない。


「も、もしかして、また…コ、コスプレバトン!?」

「うぅん、違うよ。原因は多分、あたしの作った料理かなv」

「Σな、何ィィィィィィィィ!?」


この一言は錯乱状態と言っていい、セルヴァの精神にとどめを刺したようだ。
その姿はさながらギャグのように涙をダーッと流して、今にも口から魂が抜けそうである。
パッと見、虚弱体質なジオライトのようだ。


「だって、それ以外思いつかないんだもん。
ヒマだなぁって思ってたら、いきなりこの服になってたんだ♪」

「なっ……料理作るの、禁止ー!!!!!!!」


そう、エーデの作った料理は毒電波料理だったのだ。ただ、この時点ではエーデが料理を作ると120%毒電波料理になることも、この強制コスプレ化はまだまだ軽いものであることも二人は知らない。
ともあれ、エーデにとって大声を上げて喚く程に気が動転しているセルヴァを見ているのは楽しいことに変わりはない。
1つ言えることは、こんな面白い事になることが約束されていると気付こうものなら、今後エーデは面白がって料理作りに励むであろうということだ。
まぁ、気付くかどうかは分からないが。


「うぅ……またフリル…。。」


いつの間にか部屋の隅っこで壁を向いて三角座りをしているセルヴァが呟く。火の玉とかどんよりとしたものまで背負っちゃって。


「そこまで雛苺がトラウマなんだねv
でも、もうそろそろ出発の時間だよ?」

「Σええっ!?
こ、この格好で行くのか…?」


エーデの一言に驚愕の顔を向けるセルヴァ。


「だって、服ないもん♪
ふふっ…、いつもみたいにマント被って行けばバレないよ。」


セルヴァがリアルで「orz」のポーズをするもんだから、笑いつつ一応マトモな事実を述べる。
斯くして、二人は依頼者へと行くことになったのだ。だが、何事もなく行けるかと言ったら、そうは問屋が卸さなかった。


「おい、てめぇちょっと待てよ。」

「……………。」


マントを被った二人が1階のバーのホールを通ったときに、身長差があるから目を付けたのだろう、身長2m程のガッチリとした大柄の男が肩…というよりも、腕をエーデに当てて、因縁をつけてきたのだ。
因みに、エーデの身長は159cm。この男との身長差は約40cmだ。
無言で立ち止まるエーデに、大男は更に絡んで来る。


「なぁ、お前、女だろ?そのマント脱げよ。」

「……………。」

「さっさと脱げつってんのが聞こえねぇのか?
ちょっと遊んでやるよ。」

「…………何、一勝負するっての?
良いよ。受けて立ってやろうじゃん。」


こういう場合、ノリの良いエーデは高確率で受けて立ってしまう。セルヴァはあーぁ、またか…と呆れながらも、制止しても聞きゃあしないんだから、いつも通り見守ることにした。

エーデはマントを脱ぎ捨て、例のコスプレ姿になる。


「な、何だそれ!?
何処の星の服着てんだよ。」


流石に大男も驚いたらしい。目が点になっている。
事の次第を見ていた、周りの客も一様に驚いていた。中には「似合う」だの「可愛い」だの、もっとアレな、聞き捨てならない感想も聞こえた気がする。


「まぁ、良いや。
…俺等だけじゃつまんねぇから、お前の連れと俺の連れを先に合わせてみないか?」

「Σ…は!?」


セルヴァはいきなりの無茶振り…いや、展開に吃驚した。こういう場合、決定権はエーデにあるのだが…。


「よし、乗った!!」


…やっぱり。
何だかんだで巻き添えを食らうセルヴァはある意味ツイてないのかもしれない。


「よっしゃ!!
じゃあ、お前もマント脱げよ。」

「Σなっ!?
お、お断りだ!!」

「良いじゃん良いじゃん♪」


…やっぱり脱がなきゃダメ?ダメなの??
ということで、エーデに強引にマントを剥がされる。
露になった、例のコスプレ姿のセルヴァに周りの反応は…


「だっはっはっはっは!!
何だその格好は!!!!」

「あっはっは、女装じゃねえか!!!」

「くっくっ…お前、そういうのが趣味なのか?」

「…!!
ち、違う!!//」


大男も、周りの客も大爆笑。
中には勘違いする奴もいたので、全力で否定するセルヴァだが、効果はないようだ…。


「五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!黙れ黙れ黙れ!!
おら、さっさとやんぞ!!」


湯気が見えそうなくらいまで赤面したセルヴァが虚しく吠えるが、周囲の笑い声は止まらない。


「くっく…よぅ、待たせたな!カワイコちゃん。」

「て、てめぇ…!」


暫くして、ようやく大男の連れが堪え切れない笑いを残しつつセルヴァの目の前に出て来る。
その男も、ガッチリとした体型で、身長は190cm程だろうか。
セルヴァの身長は180cmなので、10cm程の差というところだ。
その男に神経を逆撫でされるような言葉を投げられてちょっとカチンと来たセルヴァは少し本気を出そうと腹に決めるのであった。


「ふむ、何やら面白そうなことが始まるみたいですなぁ。」


そう言って来たのは、いつの間にカウンターから出て来ていたのか分からない、このバーのマスターだ。

ここのマスターは初老の男性である。性格や顔立ちは、アナサジ星人にしては珍しく、穏やかそのもの。今までよく生きてこれたなぁ、と関心さえ出来る。もっとも、経歴は謎であるが。


「4人共、銃は禁止だ。ルド、ザルト、銃は私が預かっておこう。」

「あぁ、預かっておいてくれ、マスター。」


ルドと呼ばれた大男と、ザルトと呼ばれた連れが銃をマスターに渡す。


「今、テーブルと椅子を片付けるからな…。
見物人の皆さん方も手伝ってくれないか。」


銃を預かったマスターは、他の見物人とともにテーブルと椅子をどかして丸い闘技場のようなスペースを確保する。


「これで良いだろう。
お前達、思う存分暴れるのは良いが、壊したテーブルと椅子は後で弁償してもらうからな。」


なにげにちゃっかりしているマスターである。
取り敢えず、目の前にいる奴をボッコボコにしてやる。…テーブルと椅子を壊さないように気をつけながら。
まだカチンと来ているセルヴァはそう誓い直すのであった。

斯くして、セルヴァとザルトの一戦が始まった。


「カモン!カワイコちゃんw」

「てめぇこそ、かかってこい!!」


まずはお互いに挑発をする。
ザルトは何となく見下したような余裕の笑みを浮かべている。
腹立たしいことこの上ない。しかし、ここで怒りに任せて行動したら不利になる。ここは我慢だ…。


「ほほぅ、言ってくれるじゃねぇか。
そこまで言うなら…行ってやるぜ!!」


先に仕掛けたのはザルト。どうやら、歯痒い思いをしないで済んだらしい。あの我慢する決意は一体…。
そんなこと思ってるうちに、ザルトは一気に間合いを詰め、左フックを放つ。
セルヴァはそれを右腕で受け流す。そして、素早く左に横っ飛びをして直後に来た右ストレートを回避する。
更に右ストレートの反動を利用した、左足での反時計回りの回し蹴りをギリギリの所でバック転でかわす。
スカートの中が見えたが、スパッツなので問題はない。一部の観客は何かしらの反応を示したようだが。


「お前の実力ってのは、こんなものか?」

「ふん、まだまだ、本気の『ほ』の字も出してねぇぜ…!!」


セルヴァの挑発にそう返し、再び間合いを詰めるザルト。
今度はフェイントを入れた直後に右アッパーを繰り出す。
だが、それも横っ飛びをしたセルヴァには当たらない。


「そらよっ!!」

「その程度の攻撃、俺には通用しないぜ!」


セルヴァの出した左ハイキックをガードして防ぐザルト。
逆にザルトが左ミドルキックを繰り出すが、セルヴァもガードして防ぐ。
セルヴァが左フック、右ストレート、左裏拳のコンボで攻撃するが、ザルトはそれをガード、回避、ガードと対処し、すかさず右ローキックを繰り出す。


「ちっ…。」


それをバック宙でかわしていったセルヴァに思わず舌打ちをする。


「へっ、どうした?」

バック宙の着地で地面にしゃがみ込んだセルヴァはそう言うなり、しゃがみ状態の反動を使って素早く前に突進する。


「させるかぁ!!」

タッ…

「うらぁ!!」

「ぐっ…!!」


言うなり、ザルトが右足を前に突き出すが、セルヴァは既に後退しており、当たらなかった。
これをチャンスと見たセルヴァが再び間合いを詰め、右腕をひと振りする。
慌ててガードをするザルトだが、ガード位置がズレた為、まともに入ってしまった。


「どんなもんだ!」


してやったり、の表情を浮かべるセルヴァ。
思いっきり入った為か、凄く、気持ちが良いです。


「まだまだっ!!」


言うなり、ザルトは右肘を振り下ろす。
しかし、それもセルヴァは見切っていたのか、身を屈めて回避する。


「うぐぁ…!!」

ドサッ…

「これで決めるっ!!」

「…っ!!」


その直後にセルヴァが右足での足払いを決め、ザルトは思いっきり転倒した。
ザルトの視界が一瞬ブレる。
この一瞬で勝負は付いた。素早く後ろに回り込んだセルヴァが得意のチョークスリーパーを決めたのだ。


「が…ぁ…っ!!」


どんどん腕を締め付けてフィニッシュに持って行くセルヴァ。
ザルトは完璧に気管を締め付けられ、苦しそうな裏声を上げている。もがくこともできないようだ。


「さて、降参か?

…何っ!?」


何と、連れのピンチにルドが乱入して来たのだ。
セルヴァは慌ててホールドを解くと、回避体勢を取って、ルドの拳を回避する。


「ちょっとちょっと!
乱入なんてフェアじゃないよ!?」


それを見たエーデも乱入して来て、ルドとセルヴァの間に割って入るなり抗議の声を上げる。


「連れが負けそうなのに、フェアも何もあるか!」

「あんたの相手はこのあたしだよ!」

「おやおや、ルドと来たら…。」


声を荒げてエーデに詰め寄るルドに、エーデも睨み返す。
その様子を見ていたマスターは苦笑しながら呟いていた。


「今からあたし達の勝負に移るよ!!
…あんたは下がってて。」


エーデがエーデとルドの勝負を高らかに宣言する。
それから、セルヴァに下がって見ているように促す。


「期待してるぜ。」

「任せてよね!」


セルヴァの激励に、親指を立ててウインクするエーデ。
ルドもザルトを下げさせて準備ができたようだ。
…どうやら、ルドもザルトには乱入するなと言っているらしい。自分のことを棚に上げて。

そうして、二人は相対する。


「へっ、女だからって手加減はしねぇぜ?」

「なら、見せてもらおうじゃん?あんたの本気を。」


拳をボキボキと鳴らしながら、見下したような笑みを浮かべるルドにエーデは余裕の表情でそう返す。


「ふんっ、大した自信じゃねぇか。遠慮なく行かせてもらうぜ。
…うらぁ!!」


そう言うなり、ルドは一気に近付き、顔面目掛けて唸る豪腕の右ストレートを放つ。しかし。

ばしっ!!ドスン!!


「…!?」


エーデは迫り来る豪腕を右手掌で受け止め、その勢いを利用して華麗にルドを空中一回転させ、投げ飛ばしたのだ。
尻餅をついた状態のルドは一瞬何が起きたか分からなかった。


「…っ!!
はあぁっ!!」

「うぐっ…
がはっ!!」


更に、間髪入れずに右足のストンピングを腹に叩き込み、続いて全体重を載せて倒れ込みつつ肘鉄を喰らわせる。
ルドはがむしゃらに腕を振るが、既にエーデは退避しており、体勢を立て直していた。


「ふふっ、残念だね!」

「くっそぉ〜!!
…おらぁ!!!」


余裕のエーデに対し、怒り心頭のルドは体勢を立て直すや否や間合いを詰めて右ローキックを放つ。
しかし、それもバック転で回避する。
一部の観客から歓声のような声が上がったが…まぁ、あぁいうことだろう。
セルヴァの立ち位置からでは見れなかったので、ちょっと羨ましいと思うのであった。


「うらっ……!?」


ルドは更に間合いを詰めて左ミドルキックを繰り出すが、突然視界から消えたエーデの姿を見失う。


「覇ぁっ!!」

「…!?」

ズゴッ!!

「うっぐ!?」


そのかけ声に上を向くと、飛び上がっていたエーデが目に入った。次の瞬間、痛そうな音と共にエーデの飛び蹴りがルドの顔面に決まる。
その反動で華麗に空中逆一回転を決めて地面に着地したエーデは何もアクションを取ることが出来ず、まともに強烈な一撃を喰らってフラつくルドに追撃の右ハイキックをお見舞いする。


「たぁっ!!
……Σえっ…!?
…わ、わわっ!!」


だが、その足は顔面を捉える前に手でガッチリと掴まれて阻まれた。
まだかなりフラついているルドにとっては殆ど偶然のようだったが、それでもその豪腕でエーデを軽々と宙に浮かせる。そして、足を掴んだまま振り回し…


ドサッ!!

「…っ!!」


予想だにしなかった反撃に一瞬隙を作った上に、足を掴まれて上手く受け身が取れないエーデは俯せ状態でそのまま床に叩き付けられる。


「はぅ…」


更に、もう一度振り回されて今度は仰向け状態で床に叩き付けられた。
頭がフラフラしたが、その直後に来た豪腕を転がって回避し、体勢を立て直す。


「この…やったなぁ!?」


「俺だって、お前みたいなのに負けられねぇからな。」


暫く睨み合った後、エーデが間合いを詰める。ルドはそれを右裏拳で迎え撃つ。
顔面目掛けて唸りを上げて飛んで来る裏拳を身を屈めて回避し…


「覇ぁぁああっ!!!!」


渾身の一撃…エーデお得意のラリアットをぶち込む。


ゴスッ!!

「うごっ!!」

ドスンッ!!


ルドの首に命中したラリアットは、ガッシリとした体型の身長2mの大男をも床に沈めた。
勢い良く尻餅をつき、隙だらけになったルドの頭に、後ろから如何にも女性的な細い腕が絡み付く。
これまたエーデお得意のヘッドロックである。


ギシギシギシッ…


掴んで、少し力を入れれば折れてしまいそうにさえ思える、か細い腕はしかし彼の頭を締め上げて十分なダメージを与える破壊力を生んだ。
頭蓋骨が今にも砕かれそうな音さえ聞こえてきそうだ。
もがいて抜け出そうとするものの、全く抜けずに頭を締め上げられていく。破壊しようとしているかの如き、その力で。


タン!タン!タン!


いよいよ意識を手放しかけたルドが、最後の力を振り絞って最早力を完全に失った掌で床を叩く。降参の合図だ。
すぐさま、締め上げられていた頭がその外圧から解放される。
それと共に、ルドは意識を手放した。
すぐ傍にいる筈の相手が発する、「楽勝だね!!」の言葉さえ、何処か遠くから聞こえてくるようだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


セルヴァとエーデはテーブルと椅子の位置を戻す手伝いをした後、再びマントをその身に纏って、バーを後にした。
マスターから「面白いものを見せて貰った」と賞金代わりとして貰った食料を迷彩能力を使って待機していた愛馬「Dark Ray」に乗せて、出発した。


「今回はあたし達の勝ちだったね!
それにしても、『観戦料』…そんなに面白かったのかなぁ?」


観客達が『観戦料』と称してくれた、なけなしであろう金はまるで『ゼルダの伝説』に出てくるような皮の財布にまとめて入れられている。
御好意に甘えておきながら、ちょっと後ろめたいような気持ちのエーデに、手綱を握るセルヴァは…


「まぁ、良いんじゃないか?
エーデの…ほら、アレだ。見れたとか言ってる奴もいたし。」

「セルヴァは見たの…?」

「いや、見てない。

…見たかったけどね。。
いーててっ!!痛い痛い!!痛いって!!」


エーデの表情が不審なものに変わる。
それを感じたのか、セルヴァは正直に答えた。
…余計なことまでも正直に答えてしまったのだが。
その「余計なこと」をガッツリと聞いたエーデは少し頬を膨らませて、腕を回してしがみついていたセルヴァの腰を思いっきり抓ってやった。

痛さに身を捩るセルヴァの悲鳴が、夕日で尚一層橙色に色付いた荒野に木霊したとかなんとか。


因みに、コスプレ姿は翌日の、コスプレ姿になった時間帯までずっと続いたとか。
依頼先でも大層驚かれたようである。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<あとがき>
今回のコレは、かなり前の絵チャ会で俺のネタ発言(ふたりはプリキュア…じゃなくて とかって言った気がする。)に対する某さんの発言をサルベージしてみた産物でし。覚えてるのは俺くらいだろう(笑

小説風味にしようと頑張ったんだけど、全然小説じゃない罠。
エセ小説ってことで、SSね。長いけど。


未だに白人系の肌の色が出せないorz

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コメント

ぬが!
ま、負けそうじゃ;
「小説はあんまりよくわからない」とか言っててこの実力ですか!
スゲェ、戦闘の描写がやべぇ、てか普通にうめぇ
俺なんかメンドクサイから「勝負は一瞬で決まった!」とか「一撃必殺!」とかで誤魔化しそうだorz
てか、ブログでもこれだけの文字数が打てるんだ、それだったら別にタクsのところに書かなくてもここで書けば(ry+嘘

ヤバイ、緊張してきた;
ネットで知り合った人って意外と小説書けるもんなんだなぁ、自己満足で終わらないよう頑張らなければ...Meのデータまだぁ?(ぉ

投稿: アルディガー | 2008年3月14日 (金) 16時49分

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